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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ドラフトウラ話《阪神1位指名》「まさか自分が…」指名の瞬間、なぜ本人から“表情が消えた”? そのとき現地記者が見た“広島ドラ1” の気遣い
posted2023/10/30 11:04
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
Shigeki Yamamoto
10月26日のドラフト会議で、常廣羽也斗(広島1位)、下村海翔(阪神1位)、中島大輔(楽天6位)の3選手が指名を受けた青山学院大学。当日の記者会見場では、いったいどんなドラマが生まれていたのか。席上でリップクリームを塗る下村をイジる常廣、阪神1位指名後に見せた気遣い……緊張と歓声の青学大「ドラフト指名のウラ側」に密着した。(全2回の1回目/後編へ)
「3人とも、無事に指名されるといいんだけど」
「こんなに人が来るとは……。やっぱりドラフト会議ってすごいですね」
たまたま席で隣り合った「青山スポーツ」の学生記者は、そう言って目を丸くした。10月26日、15時58分。ドラフト会議が始まる約1時間前、青山学院大学の記者会見場である青山キャンパス総研ビル12階の大会議室には、すでに多くの報道陣が詰めかけていた。
記者もカメラマンも、時間を追うごとに増えてきている。各局のテレビクルーを含めると、目算で100人に迫ろうかという大群だ。
3人とも、無事に指名されるといいんだけど――そんな会話を至るところで耳にした。
2023年、青山学院大学からプロ志望届を提出したのは、広島が1位指名を公言した常廣羽也斗と“外れ1位”までの指名が濃厚な下村海翔の両右腕、そしてキャプテンで外野手の中島大輔の3名。1位重複の可能性もある常廣と下村の指名は、まず間違いない。不透明なのは、7月の日米大学野球選手権でも日本代表の主将を務めた俊足巧打の中島の評価だった。
3人はこの大会議室のスクリーンで中継を見届け、指名を受けた選手のみが会見を行う予定になっていた。もし、中島だけが漏れるようなことがあれば……。「3人とも、無事に」という言葉には、おそらくそんな含意があった。
16時を回り、“主役”の3人を除いた野球部員たちが続々と着席していく。多くの学生がサイドを短くしたツーブロックの髪型で、みな「AGU BASEBALL CLUB」のワッペンが縫い付けられたブレザーをさわやかに着こなしている。