スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER

最低賃金は月収27万円なのに…まさかの逆ギレ「休憩なんだよ!」ラグビーW杯、現地記者が味わった“絶望感”「日本人とフランス人、働き方の差」 

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2023/10/02 17:11

最低賃金は月収27万円なのに…まさかの逆ギレ「休憩なんだよ!」ラグビーW杯、現地記者が味わった“絶望感”「日本人とフランス人、働き方の差」<Number Web> photograph by Getty Images

パリの秋、美しい街並み。ラグビーW杯、フランス現地記者が味わった“絶望感”とは?

 いろいろ頭に来ていたので、フランスの法律で定められた最低賃金を調べてみることにした。この人たちは、いったいいくらで働いているんだ? 日本語の資料があった。「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」が今年2月に発表したレポートにはこうある。

「2023年1月に、従来の時給11.07ユーロから11.27ユーロに引き上げられることになった。月額では1カ月の就労時間がフルタイムの151.67時間の場合には、1,709.28ユーロに引き上げられる」

 日本円で約1780円。月給に直すと27万円程度になる。

 うーむ。

 バスを自主判断でキャンセルするドライバー。目の前の客を捨て、休憩時間に突入する職員。提供されるサービスの質は、日本とは比較にならないほど低い。

「フランス人は、迷惑をかけながら生きてる」

「でも、個々の人たちはみんな親切だし、良い感じですよね」というのは写真部員Mくんの意見だ。

 これには私も首肯した。近所のマルシェの肉を扱う専門店の店主たちは、売るだけでなく、いろいろ調理方法まで教えてくれる。

 さらに労働意欲が高いのはUberのドライバーたちだ。トゥールーズ、ボルドー、ニース、リヨンとどのドライバーもコミュニケーション力が高く、労働意欲にあふれていた。

 頑張れば、それだけ報われる。そうした姿勢が伝わってくる。しかし、組織に入っている人たちからはそれが感じられず、取材に出るたび、私はトラブルに見舞われた。

 組織に属する人間は、甘えているのか? 個人の溌溂さを目の当たりにするだけに、構造的な問題にいろいろと思いを馳せてしまう。

 それでも――フランスは魅力的であり、フランス人は、とても興味深い。

 そう思っていたら、J Sportsの解説で渡仏してきた藤島大さんとフランス談議になった。

「友だちが言ってた。フランス人は、誰もがちょっとずつ迷惑をかけながら生きてる」

 なるほど。迷惑をかけることに抵抗がないのだな。

 じゃあ、私も、ちょっとずつ人に迷惑をかけるとするか。でも、これって日本人にとって、結構ハードルが高いんだよな。

<《現地の物価高》編から続く>

#5に続く
フランスの“ヤバい夜”…「ミトマ!」敵サポーターが絶叫、記者席では怒声「××××(怒)」ラグビーW杯、現地記者を救ったひと言「サカイ!」

関連記事

BACK 1 2 3 4 5
ラグビーワールドカップ

ラグビーの前後の記事

ページトップ