Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「まったくない話だった」パリ世代・半田陸の”ローマ報道”とガンバ移籍の真相、現代型SBの理想は“あの2人”の融合「いい部分を盗みながら」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/03/01 17:01
22年11月のU-21スペイン代表戦にも出場した半田陸。パリ五輪を目指す世代別代表でも活躍が期待される
半田の表現に説明を加えると、選手が動くことによって相手も動き、それによってスペースを生み出し、他の選手がそのスペースを使うのが“動”、適切な立ち位置を取ることで相手を動かし、それによってスペースを生み出して攻撃を仕掛けるのが“静”となる。
例えば、2月18日の柏レイソルとの開幕戦では、前半の終盤から後半にかけて右センターバックの三浦弦太から右ウイングの杉山直宏へ、何本もパスが通っている。
このとき、右サイドバックの半田は開いて自らがパスを受けるのではなく、三浦のそば、ハーフレーンに立つことによって対面の小屋松知哉の判断を迷わせ、三浦から杉山へのパスコースを生み出していた。
「柏戦では特に、センターバックからウイングへのパスを使おうという話をしていたんです。山形時代なら僕が小屋松選手の背後に立つことで引きつけて、パスコースを空けるやり方でしたけど、ダニはそれをあまり好まない。チームメイトとの立ち位置の関係性において、自分の特徴を出していくことが大切になると思います」
「ビルドアップのときに、遠くを、奥を見ろ」
ボール保持時におけるポヤトス監督の要求は、明確だ。
「もっと技術を伸ばさないといけないと。あと、ビルドアップのときに、遠くを、奥を見ろって言われています。弦太くんから右ウイングに飛ばして、下げてもらったボールを自分がどう前に刺していくか」
左インサイドハーフの宇佐美貴史やセンターフォワードの鈴木武蔵にくさびのパスを打ち込む、あるいは、逆サイドのウイングまで大きく展開する――。やはり、出し手としてのサイドバックの働きが、ガンバの攻撃の鍵を握っていると言えそうだ。
かつての半田はヌサイル・マズラウィ(バイエルン)やトレント・アレクサンダー・アーノルド(リバプール)、アーロン・ワン・ビサカ(マンチェスター・ユナイテッド)など、海外のサイドバックを参考にしていたが、今はどちらかと言うと、日本人選手を見て学ぶことが多いという。
なかでも最近、よく目標として掲げるのが、日本代表の酒井宏樹である。
半田は自身の強みとして、「1対1の強さ」「長距離を走って前線に絡めること」を挙げている。
「酒井宏樹さんと山根視来さんを足して…」
もちろん、それらも強みだが、半田はビルドアップや立ち位置の理解に優れ、より現代的なサイドバックというイメージだ。だから、本人と見る者が思う強みにはギャップがあるように感じる。
「いや、ビルドアップも強みなんですけど、自分としては、強さや走力をより強みにしたいというか。より大事にしているのがそっちなんです。攻撃はプラスαだと思っています」
まずは守備という考え方は、元センターバックだからこそ、かもしれない。