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なぜフランス初陣で初ゴールを決められたのか…鈴木唯人21歳が試みる意識改革「パスで逃げていたら何も変わらない」〈パリ世代インタビュー〉
posted2023/04/25 11:01
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
ストラスブール加入から2カ月半。念願のフランスリーグ・デビューを果たした鈴木唯人は、ピッチに立ったわずか14分後、初ゴールまで決めてみせた。
4月16日に行われたアジャクシオ戦のゲーム終盤、イブラヒマ・シソコのパスを受けると、立ちはだかる3人のDFに怯むことなくドリブルを仕掛けて中央に切れ込み、4人目のDFが寄せるよりも早く左足を振り抜く――。
直後、ホームのスタッド・ドゥ・ラ・メノが爆ぜた。
清水エスパルス時代であれば、パスを選択していたかもしれないシチュエーションだが、鈴木は脇目も振らずにシュートへと持ち込んだ。
強引にも見えるプレーはその2週間前、彼が自身に言い聞かせるように、口にしていた言葉そのものだった。
「こっちではゴールに直結する動きをした選手が評価されるんですよ。ある意味、点が取れれば、その過程はどうでもいいというか。自分も強引に行くとか、普段なら選択しないようなプレーをしないといけないなって感じているところです」
デビューはそう遠くないかと思われていたが
4月3日、モナコ戦翌日――。
待ち合わせのホテルのカフェに姿を現した鈴木は、「昨日の試合前、南野(拓実)さんと話す機会がありましたよ」と笑顔を覗かせた。
この日、前日のリーグ戦で出番のなかった選手たちは負荷の強いトレーニングを行ったようで、「今日は疲れました」と苦笑する。
エスパルスからストラスブールへの期限付き移籍が発表されたのは、Jリーグの各チームのキャンプが佳境に入った1月27日のことだった。
2月1日のスタッド・レンヌ戦でさっそくベンチ入りメンバーとなったとき、デビューの瞬間はそう遠くないと思われた。
ところが、その後10試合でベンチ入りしたものの、5人交代の時代にもかかわらず、声はかからない。唯一の出場は3月18日、Bチームの一員として参戦した3部リーグのシルティカイム戦の前半45分間だけ。コンディションの維持を含め、アスリートとして難しい状況に置かれていたのは間違いない。
「サッカーの本質を捉えている」と語る根拠は?
だが、鈴木は「刺激と学びだらけ」とポジティブに受け止めていた。
「フランスリーグって、言葉で表すのは難しいんですけど、シンプルに言うと日本とは真逆で、求められることが全然違う。日本のときのままやっていても評価されないなって。頭をちゃんと切り替えないといけない。でも、日本とは違うサッカーを知れて、自分にはプラスしかないですね」