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栗山監督に非情采配はできるのか? 直撃インタビューに指揮官が明かした決意 ヌートバー選出が示す「侍ジャパンの使命」とは 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2023/02/12 11:01

栗山監督に非情采配はできるのか? 直撃インタビューに指揮官が明かした決意 ヌートバー選出が示す「侍ジャパンの使命」とは<Number Web> photograph by Ichisei Hiramatsu

栗山英樹監督がWBCに向けて構想を明かした

 メンバーが決まった直後から、中堅を本職とする選手がいないことへの不安を指摘する声は絶えない。先発ではセンターの守備経験のあるヌートバーを起用するとして、もしそのヌートバーの状態が良くないときにどうするのか。それでも栗山監督はヌートバーにこだわり、使い続ける決意を固めているのか。

 テレビ番組の対談で栗山監督が第2回大会で指揮を執った巨人・原辰徳監督に、不振のイチロー外野手を使い続けた理由を聞いた場面があった。そこで原監督は「代えることは一切考えなかった。それはこのチームを否定することだからだ」と語っている。

 ヌートバーの加入は日本の野球界がドメスティック一辺倒の代表チーム作りから踏み出す、その画期的な第1歩という意味がある。日本生まれではない日系メジャーリーガーの招集案は栗山監督の頭には昨年5月くらいからあり、10人前後の候補選手の状況を調べながら可能性を探ってきた。

「これ(日系選手の代表への招集)をやってもいいかどうか。野球界にプラスになるかどうかっていうのはすごく考えました。で、周りの信頼できる人たち、野球じゃない世界の識者たちにも『どう思います?』って意見も聞きました。そうしたら野球のグローバル化という視点もあったし、(ロシアとウクライナの)戦争も大きかったですね。いまだにこの時代に戦争が起こるなんて誰も思っていなかったし、隣で外国の人と普通に接していたら、そんなことも起こらないんじゃないかとかも思うじゃないですか。そういう色んなことを考えたとき、野球の持つ意味みたいなことを考えたときに、やってもいいんじゃないかなと思い始めました」

 それがこのチームが野球界に対する、もう1つの意味なのである。勝ち負けだけではない。野球というスポーツを通じて日本人のグローバリゼーションの道を開くきっかけになっていく。スポーツの国際大会が持つもう1つの価値がそこにあり、そしてヌートバーが代表入りすることで、その価値が具現化されていく。

ヌートバーと心中する覚悟?の問いに…

 だとすれば原監督の言葉を借りればヌートバーを交代させるということは「このチームを否定することになる」わけだ。だから栗山監督はあえてヌートバーの控えは置かないのではないか、ヌートバーと心中する覚悟ではないか。そういう見方もある。

「表向きには……原さんの言っていることは、分かっています。心中してあげなければいけないところはあるかもしれないです。ただ僕はそれでも代えると思っています」

 そのことを問うと栗山監督は首を振った。

「近ちゃん(近藤健介外野手、ソフトバンク)はセンターで使ったりもするし、どこでもできる。(ヌートバーが)ケガをしたら、すぐ代えられる。ケガをしたり、調子が悪いときに交代というのは考えなければいけない。いつでも代える前提で選手には話をしているつもりですし、そうすることがすごく重要なことかなとも考えています。非情さというか……それが逆に、一流の選手に対する優しさなんだと思うんですね。一番勝ちやすい形を『監督、決断できますよね!』って選手は見ている。一流選手は自分の調子が悪ければ、それを分かっていますから。『まさか僕を続投させないですよね』って思うのが一流選手でしょう」

【次ページ】 「使命としてやらなければいけないのは…」

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