必要とあらばヌートバーも交代させるし、そこに躊躇はない。自分ではなくチームが先にある。そのことをヌートバーを含めた選手たちは理解していると栗山監督は考えているからだ。

「使命としてやらなければいけないのは…」

　監督、選手が持つ唯一絶対の目標は「世界一」である。目標達成のために、何が必要かは選手たちが一番理解している。その部分での信頼が指揮官にはあるということだ。

「世界一に届くということは、このチームの野球の勝ち負けだけではない。先輩方が作ってくださった緻密な考え方や、練習方法というもの……それを僕は世界一だと思っていますが……それを示すにはこの大会を勝ち切るしかない。しっかり結果を出して、先輩方が作ってきたものを『これ凄いでしょ！』って示さなければいけないと思っています。だから自分たちが伝えたいこと、使命としてやらなければいけないことっていうのは、まず勝ち切らないと伝わらないことも分かっています」

　代表選手の先行発表の記者会見に出席したロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手が、WBCの思い出をこんなふうに語っていた。

会見でWBCへの思いを語った大谷　©︎Nanae Suzuki

「僕も野球を学生でやっていて、一番楽しい時期だったんじゃないかと思う。日本のトップの選手たちが1つのチームで、他の国のトップ選手たちとやっているのを観るだけでワクワクしていた」

　世界一に輝いた第1回大会と第2回大会の韓国との激闘をテレビ観戦しながら、いつかこの舞台にと大谷少年は思いを馳せた。そして今回、侍ジャパンに参加した多くの選手たちも、同じようにWBCやオリンピックの日本代表のユニフォームに憧憬を抱いて、このチームに参加してきている。

　あのとき抱いた興奮と感動を今度は自分たちが日本の、世界の野球ファンに伝える番である。勝つことで日本野球の素晴らしさを国の内外に伝え、野球界のグローバル化を進めるというこのチームの使命は、自然と達成されるはずである。

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