炎の一筆入魂BACK NUMBER
「引退という言葉が見えてくる…」プロ13年目のベテラン秋山翔吾が目の色を変えて追求する“課題”とは?
posted2023/02/13 06:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
KYODO
広島のキャンプ地・日南に、初めて見る光景が広がっていた。背番号25の新井貴浩が監督として戻り、4日からは球団アドバイザーとなった黒田博樹氏が若手に指導する姿がある。レジェンド2人の帰還に沸くキャンプ地で、初めての時間を過ごす選手がいる。昨季途中、米国から広島に加入した秋山翔吾だ。
日本でのキャンプは西武時代の19年以来、4年ぶり。その西武のキャンプ地・南郷スタジアムから車で約15分しか離れていない天福球場で、日本球界復帰2年目に向けた準備を進めている。
昨年は激動の1年だった。レッズの開幕ロースターから外れてFAとなり、パドレスと契約。3Aエルパソでは結果を残しながら、新型コロナウイルス感染による離脱もあり、メジャー昇格はかなわず、日本球界復帰となった。
秋山ほどの技術と経験のある選手でも、シーズン途中に米国から日本へ復帰してすぐに適応するのは容易なことではなかった。チーム事情もあり、十分な調整期間もないままチームに合流。秋山自身、先を見据えた調整ではなく、目の前の試合に合わせる調整を余儀なくされた。コンディション不良も重なり、復帰1年目は打率.265、5本塁打、26打点に終わった。
再び日本野球にアジャストするために
日本野球へリアジャストしなければいけない。昨季とは違い、準備期間はある。平均球速が日本よりも速く、打者の手元で変化する球種が多い米国仕様の打撃からモデルチェンジ。シーズン終了後からミートポイントを投手寄りに戻した。
加えて今年35歳と、一軍キャンプ参加選手では最年長となった。今年、リアジャストできるか否かが自身の野球人生を大きく変えると自覚する。
「『タフにシーズンを乗り切れたな』と言える年にしたい。簡単ではないと思いますけど、ここでできなかったらたぶん来年も再来年もできないと思う。試合に出てボロボロになって、ただ目減りして終わっていく感じになりそう。だからグッとアクセルを踏むくらいの気持ちでやっていきたい」
現状維持ではなく、もう一度上昇する1年にしようとしているのだ。
初日から外国人選手らとともに、一部別メニュー調整が許可されているが、ひとりでバットケースを担いで右翼後方の屋内ブルペンへ向かったかと思えば、ときにはウエイトルームにこもることもある。広島流に、自ら課したメニューも追加。春季キャンプでも「アクセルを踏む」姿勢を貫き、「スロー調整」や「マイペース調整」などとは表現できない練習量をこなしている。