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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「三笘薫は改めて衝撃的でした」元チームメイト・中村憲剛も舌を巻いた“個としての質的優位”「できればウイングバックではなく…」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2022/11/30 17:04
コスタリカ戦で決定機を創出した三笘薫。川崎フロンターレでチームメイトだった中村憲剛氏は「三笘の特徴はドリブルだけではない」と強調する
三笘薫の武器はドリブルだけではない
後半の日本は、ペナルティエリア手前で直接FKを2度獲得しています。相手のファウルを誘った流れを巻き戻すと、どちらも守田が起点になって前線に縦パスを通しています。3-4-2-1同士でがっちりマッチアップしているので、前線の選手がある程度タイトなマークを受けていても、勇気を持って縦パスを刺し込まないとあのようなチャンスは作れません。
中から縦パスをつけたら前を向ける。ポストプレーで前向きの選手に預けられる。そうすれば、相手は中央を締めざるを得ないので、サイドで時間ができる。サイドが高い位置で仕掛けることができれば、中央が空くので相手の視線を動かせる。そういうバランスの良い攻撃をやりたかったはずですが、暑さの影響で判断が鈍ったのか、あるいは疲労があったのか……。さらに言えば、メンバーを入れ替えたこともあって、攻撃のイメージの共有が難しかった印象です。
得点は狙いたいけれど、過度のリスクはカウンターを浴びることにつながりかねない。その結果として攻めあぐねる。膠着状態のなかで好機を演出したのは、三笘薫でした。
コスタリカはドイツ戦での働きはもちろん、プレミアリーグでの活躍も分析済みだったでしょう。はっきりと三笘を警戒してきました。それでも、サイドをえぐってビッグチャンスを二度作りました。僕にとっては川崎フロンターレのチームメイトとして良く見ていたドリブルですが、W杯で同じように軽やかにえぐっていく姿は改めて衝撃的でした。
一度目の突破で相手の警戒レベルがマックスになり、ダブルチームで抑えにかかってきても、個人で局面を打開できる「質的優位」を彼は見せつけました。
3-4-2-1同士で1対1のシーンがメインだったことで、対峙した選手はまずドリブルを警戒して無闇に飛び込まず、少し距離を取りました。その少し距離を取ったときに、ドイツ戦で同点弾のきっかけとなるパスを南野拓実へ出したように、誰かが絡めればさらによかったでしょう。
ドリブルだけではなく周りとの連係で崩すことができるのも、三笘の特徴です。ウイングバックではなくもうひとつ前へ置き、なおかつ選択肢が増えるように周りの選手たちがサポートをできれば、もっと危険なシーンを作れたのではないかと感じました。
<後編へ続く>