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ソフトバンク松田宣浩は一軍に残すべきか? 2901日ぶり二軍戦で確信した“熱男の圧倒的尊さ”…思いは受け継がれ「マスオ~!」も誕生
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2022/08/06 11:00
8月3日、2901日ぶりに二軍公式戦に出場した松田宣浩
「7月の途中からオープンスタンスで打っています。とにかくシンプルにバットを出すことを考えているし、北九州(7月20日の楽天戦)での試合でもヒット(2安打)が出た。継続していきたい」
松田が発するパワーとは何なのか?
プレーで存在感を示す。それは野球選手として一番大切なことに違いない。
ただ、松田宣浩が重宝されているのがそれだけではないことは、多くの人が知っているはずだ。熱男キャラ全開で、チームに明るさと活気をもたらす太陽のような存在。ソフトバンクではもちろん、オールスターゲームになればパ・リーグの太陽となり、WBCなど国際大会では侍ジャパンのそれになる。
たしかに近年の成績は振るわない。それでも工藤公康前監督も、現在の藤本博史監督も松田のことを唯一無二の存在だと高く評価している。
疑う余地がないのは誰もが承知の上だ。20年以上このチームを取材してきた筆者もその一人だと思っている。
だけど……。
不振を極めているのは数字によって証明されている。それでも一軍に置き続けるのは正しい判断なのか。信頼の片一方でそんな疑問が心の中で渦巻いていた。
松田が発するパワーとは何なのか。自分の中で上手く咀嚼できなくなっていた。
響きわたる熱男の声…「マスオさ~ん!」
PayPayドームは4万人収容の巨大スタジアム。それに対してタマスタ筑後は12球団のファームの中では立派な施設ではあるが、やはりコンパクトなつくりのためか選手との距離感がぐっと近くなる。物理的な意味合いだけでなく心の距離も近く感じる。それがファームの魅力でもあるのだ。
松田がウエスタン戦に出たその日、試合前練習から眺めていたが、存在感がとんでもなく際立っていた。球場の建物内にいる際、選手の声は基本的には届かないのだが、松田の声だけどこからか漏れ伝わってくる。
試合が始まると、そのギアがまた一つ上がる。しかも声出しがまた独特なのだ。
ホークス1番打者の川村友斗(1年目・背番号132)が打席に立ち、ボール球を見逃すと「いいぞ、ブルー!」と声が飛ぶ。筆者は一塁ダグアウト横のカメラマン席にいて“??”となっていたのだが、川村をよく見ると青の肘当てを装着していた。どうやら即興であだ名を考えたようだ。松田は「命名の名人」で、今宮健太は「ケンタッキー」だしリチャードは「リッチモンド(ホテル?)」と、並の脳みそでは考え付かないような抜群のセンスを発揮する。