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現役東大生が分析する“レアル・マドリーの強さの秘密”とは?「現代サッカーのトレンドを全力で否定」「いい意味で“型”がないんです」
posted2022/06/29 11:02
text by
澤田将太Shota Sawada
photograph by
Etsuo Hara/Getty Images
東大ア式の日常と「頭を使うサッカー」
――木下さんが考える「東大ア式のアドバンテージ」とはなんでしょうか。
「設備はかなり整っていると思います。グラウンドも2面あってスタッフも多いし、トレーナーもいる。学生間での上下関係もなく主体性を持っている人ばかりなので、すごく自由というのも利点ですね。FCヴァッカー・インスブルックとの提携の件がまさにそうですが、各々がやりたいことを見つけて部に還元しています。逆に不利な部分は、これはもう仕方がないのですが、スポーツ推薦がないことです。他の大学が推薦で優秀な選手を集める一方で、東大は入試に合格した人しか入れない。どうしても個人の力で勝てない部分は出てきます」
――その差をテクニカルスタッフが埋めていければ、と。
「それが僕らの仕事だと思っています。東大には『頭を使ってサッカーをする』というコンセプトが根付いているので、プレイヤーにも戦術的に振り返るクセがついていて、言いたいことが伝わりやすい。日曜の試合に向けて林陵平監督(東京ヴェルディ、柏レイソルなどでプレー)と一緒にゲームプランを考えて、木曜日に選手にプレゼンします。ベースには東大のやりたいサッカーがあり、相手に合わせてディティールを詰めていくイメージです。
個人間でも、Slackにデータを投げて選手と議論したり、分析ルームに選手がふらっと来て話し合ったり……。部員同士のコミュニケーションはかなり取っていると思います。上下関係がないので、率直に言いたいことを言い合えるのがいいですね」
――大学2年時に怪我がきっかけでテクニカルスタッフに転向したという木下さんですが、もともと分析的に試合を見ることや、戦術を考えるのが好きだったんでしょうか。
「いえ、全然ですね(笑)。サッカーをプレーするにしても観るにしても、戦術についてはあまり深く考えていませんでした。テクニカルスタッフにすんなり転向できたのは、山口遼前監督(現Y.S.C.C.横浜セカンドチーム監督)と彼の指導を受けたOBコーチのもとで『頭を使ってサッカーをする』という下地ができていたからだと思います。スタッフへの転向後はnoteに分析記事を書き続けるなど、一気に“沼”にハマっていきました」