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現役東大生が分析する“レアル・マドリーの強さの秘密”とは?「現代サッカーのトレンドを全力で否定」「いい意味で“型”がないんです」
text by
澤田将太Shota Sawada
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2022/06/29 11:02
14度目のCL優勝を飾ったレアル・マドリー。その“理不尽な強さ”の一端を東大ア式蹴球部テクニカルスタッフの木下慶悟さんが解説してくれた
「マドリーにはいい意味で“型”がないんです」
――2021-22シーズンのマドリーは、バルセロナに大差をつけてラ・リーガ優勝。CLでもパリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティ、リバプールを相手に劇的な勝利を積み重ねました。木下さんが考える勝因はなんでしょうか?
「ピッチ上で異なる戦い方を選べることが大きいと感じました。たとえば、同格以上のチームを相手にしたときは、カゼミーロ、モドリッチ、クロースの3センターを中心にスローテンポでボールを回し、ベンゼマとビニシウスでカウンターを狙っていく。一方でドローやビハインドの勝負時には、ロドリゴやカマビンガなどダイナミズムのある選手を投入して、オープンなゲームを仕掛けていく。
CLを3連覇した時も、中盤でイスコがペースを落とすんですけど、ベイルやアセンシオが速い攻撃で変化をつけていました。『球離れが悪い』と言われがちなイスコですが、ボールをこねくり回すのにはそういう意味があったのかなと思います。相手のプレッシングが強い時ほど、存在感は際立っていましたから」
――相手に合わせて、さまざまなスタイルを使い分けていると。
「マドリーにはいい意味で“型”がないんですよね。その場で選んだ戦術を成立させてしまうだけの力を持っているんです。もちろん個々人の能力がずば抜けているからできることだと思います。
シティのように明確なゲームモデルがあった方が再現性は高いため、1年間を通したリーグ戦では勝ち星を積み重ねやすいと思います。今年は優勝しましたけど、マドリーがラ・リーガで取りこぼすことが多いのは再現性が低いからでしょうね。その代わり一発勝負のトーナメントでは、なんでもできる万能性が強みになっている。疲れも怪我人も出るシーズン終盤はなおさらです」