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南野拓実の新天地「モナコ」意外と知らないマメ知識…“伊東純也の恩師”が覚醒のカギ、ライバルは?《王妃も縁ある高貴なクラブ》
posted2022/06/29 17:02
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph by
Getty Images
面積は2平方キロメートルほどと世界第2の小さな国だが、1人あたりのGDPは日本の4倍を超える。世界中のセレブが集い、空が地中海と同じ深い青に染まれば、カジノを抱える街の灯りが夜を照らし出す。
この都市国家にもフットボールのプロクラブがあり、公国らしくエンブレムには王冠を戴く。ユニフォームは国旗と同じ色で染め上げられているが、その赤と白が斜めに区切られるデザインは、他と一線を画す。考案したのは、エルメスの「ケリーバッグ」でも有名な、グレイス・ケリー公妃。
南野拓実が加わるASモナコは、そんな高貴なクラブだ。
きらびやかなモナコ公国にふさわしく、所属する隣国フランスのリーグアンでは8度の優勝を誇る。現フランス代表監督ディディエ・デシャンの下、2003-04シーズンにはチャンピオンズリーグ決勝まで駆け上がっている。
近年は主軸放出で安定性を欠く
ただし、近年のASモナコは安定性とは程遠い。ちょうど10年前のシーズンには、フランスの2部リーグを戦っていた。ここ5年間でも、シーズン途中の監督交代が3度起こった。中には、短期間ながら所属したアカデミーからトップチーム、さらに世界の高みへと羽ばたいたティエリー・アンリをシーズン途中で招へいしたものの、3カ月半後にわずか2勝で解任したこともある。順位も1年ごとに大きく上下して、2位のマルセイユに勝ち点2差の3位で終えた昨季も、冬には監督がすげ替えられていた。
そのアップ&ダウンも、致し方ないのかもしれない。成績が上がれば、選手が引き抜かれる。リーグアン制覇の直後には、ベルナルド・シウバとバンジャマン・メンディが、大金と引き換えにマンチェスター・シティへと去っていった。2人の合計額を超える移籍金1億8000万ユーロを残していったのが、キリアン・ムバッペ。3位になった今年のオフの動向は、まだ分からない。2000年代前半には経営の問題が表出し、現在の筆頭株主はロシアの新興財閥「オリガルヒ」のひとりであることも記しておくべきだろう。