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オリンピックPRESSBACK NUMBER
“父が医師”の環境で育った兄弟は、なぜプロクライマーになれたのか? 楢崎智亜・明智の仲良しすぎる幼少期《木登りで骨折も!?》
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byUDN SPORTS
posted2022/05/24 06:00
左・智亜(小3、9才)右・明智(年長、6才)。小さい頃から仲が良く、弟・明智はいつも兄の友達に混ざって遊んでいたという
――お互いにこれだけは勝てない、逆に、絶対に自分の方が勝っているというものはなんでしょうか。
明智 身長ぐらい?(笑)
智亜 それは勝てない(笑)。あとはモテ具合(笑)。明智の方が繊細な感覚とか、体の意識は上だと思います。速く、強く動かすのは僕の方が得意ですけど、コントロール力は選手のなかでも明智はかなりうまい方です。
明智 智くんはゴリ押す力も強いんですけど、何よりも頭がいい。課題を大きく捉えられたり、課題のムーブを壊したり、新たな気付きとか発想力がすごくて。そこは勝てない……とは思わないですけど、僕ももっと身に付けていかなければいけないところだと痛感しているし、競技者としてすごく尊敬している部分ですね。なかなか越せない壁です。
智亜 ボルダリングであれば、例えばこのシチュエーションだったらこのムーブを選ぶというような戦術眼というか経験値が、かなり順位に直結してくるので重要なところですね。
――競技前のオブザベーションで課題を確認してルートを設計するのと、競技時に実際に壁を登り始めて瞬時に判断するのはやはり異なってきますか。
智亜 違いますね。やっぱり離れて課題を見るのと、実際に壁の中で登りながら見るのとでは、実際の距離感だったり、ホールド(壁に取り付けられる突起物)の出っ張り具合によって微妙にムーブが変わったりするので。だからこそ何パターンか選択肢を持っておくんです。ただ、僕の場合はそのなかで「この確率が一番高そうだな」というように、優先順位を決めておく。そしてシチュエーションに応じて、瞬時に対応するという感じですね。
明智 できないです! 普通はできないです。「よし、これで行こう!」「あ、できないな」と壁から落ちてしまいますから。「あ、できない」「それならこっちで行こう」と瞬時に判断して、最善の選択をして実行に移すことは、なかなかできないこと。例えば、残り40秒となったとき、それまで試したことをリトライしたくなるんですよ。「最後にもう1回」って。でも、そこでガラッと戦法を変えるというか、違う選択肢に挑むのは難しい。それが出来るから、智くんはこんなにリザルトが安定しない競技でも、常に上位をキープできているし、そこは素直にすごいところ、武器だと思いますね。
(後編へ続く)
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