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オリンピックPRESSBACK NUMBER
“父が医師”の環境で育った兄弟は、なぜプロクライマーになれたのか? 楢崎智亜・明智の仲良しすぎる幼少期《木登りで骨折も!?》
posted2022/05/24 06:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
UDN SPORTS
2022年シーズンが開幕したスポーツクライミング。ワールドカップのボルダリング開幕戦は、昨夏の東京五輪代表で日本のエース・楢崎智亜が優勝し、続く第2戦でも準優勝を果たした。韓国での第2戦では弟・明智も参戦し、決勝に進出した。
幼い頃から切磋琢磨し、お互いを高め合ってきた“身長差17cm”の仲良し兄弟。兄・智亜は幼少期から養われた圧倒的な身体能力の高さを生かしたダイナミックかつしなやかな動きで世界のクライミング界をリードしている。一方、弟・明智は187cmの長身を生かしたリーチを使った登りを武器に、一歩前を走る兄を追い続けてきた。
ともにプロクライマーとして、スポーツクライミング界を牽引している2人だが、選ぶ道が違っていたならば、今頃、白衣に袖を通して、患者と向き合っていたかもしれない。
父は医師「プレッシャーはなかった」
――プロクライマーとして活躍するおニ人ですが、医師であるお父様のあとを継ごうと考えたことはなかったのですか。
智亜 (明智選手は)最初そんな感じだったよね? 僕は昔からスポーツが好きで、スポーツ選手になりたかったので医師という道は考えていませんでした。でも、兄(三兄弟の長男)が文系の大学に進学して、あとを継ぐのなら僕か明智かのどちらかしかいなくなって、その時は少し考えた時期もありました。結局、僕がプロになるかどうか迷っていた時期に、兄は僕が世界に挑戦している姿を見て、「俺も挑戦したい」と一念発起して、大学を辞めて医学の道に進んだんですけどね。
明智 小学生ぐらいの頃は医師になりたいと思ったこともありましたけど、あくまでも小学生レベル。僕は勉強が好きではなかったので、やりたくないなと(笑)。
智亜 だから僕が(医師を)やるしかないかなと一瞬考えたこともあったんです。勉強と並行してクライミングをしていた時期もありました。でも、父は僕らの進路に関してはプレッシャーかけてくるようなことは一切なかったんですね。医者になれと強制されたこともないですし。
明智 むしろ、二代目はどこも成功しないから、医者はやらなくていいよと言ってくれていたくらいで。
兄・智亜は2015年にプロに転向し、日本ユース選手権やアジアユース選手権で優勝を飾ると、2016年に行われた世界選手権ではボルダリング種目で初優勝。ボルダリングW杯の年間優勝にも輝いた。プロ転向2年目でようやく手にしたタイトル。もし、結果が出なければ、別の道を歩んでいたかもしれない。そして、弟・明智も兄に続き、プロに転向した。