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<ワールドシリーズプレビュー>穴馬シリーズと波瀾の予兆。アストロズ対ブレーブスは意外な“投高打低現象”が勝負の分かれ目?
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2021/10/26 11:00
リーグ優勝決定戦でともにMVPを獲得したアルバレス(左・アストロズ)とロサリオ(右・ブレーブス)。ワールドシリーズでも打棒でチームを牽引できるか
バルデスは、第5戦で好投した。今季のポストシーズンゲームで、8回を投げ切った投手は彼ひとりだ(ジャイアンツのローガン・ウェブは7回3分の2で降板した)。その勢いにつづいたのが、第6戦で5回3分の2を無失点に抑えたルイス・ガルシア。アストロズは、進境著しいこのふたりに、ワールドシリーズでも思い切って長いイニングを任せる可能性が高い。
そもそも、短期決戦という意識が働きすぎるせいか、近年のポストシーズンゲームはこま切れの継投策が圧倒的に多い。ドジャースのデイヴ・ロバーツ監督は、フリオ・ウリアスやマックス・シャーザーを無理使いして墓穴を掘ってしまったし、レッドソックスのアレックス・コーラ監督も、ネイサン・イーヴォルディの濫用を悔んでいるはずだ。神経過敏な采配は、得てして自滅を招く。
その点、ワールドシリーズで対決する両チームは、監督が策に溺れるタイプではないだけに、先発投手を大事に長持ちさせるゲームが見られるような気がする。
アストロズのダスティ・ベイカー監督(72歳)は、ランス・マッカラーズJr.の戦線復帰が微妙とあって、バルデスとガルシアにゲームを託すケースが増えるだろう。
3本柱が命運を握るブレーヴス
ブレーヴスのブライアン・スニッカー監督(66歳)も小細工は弄さないタイプだ。エースのマックス・フリードは、ポストシーズン3試合に先発して16回3分の2を投げている(MLB全体で3位タイ)。彼につづくチャーリー・モートン(3試合で14回3分の1)やイアン・アンダーソン(3試合で12回)も、安定したペースだ。
スニッカーは、この先発3本柱を維持していくと思う。打線が自慢のベイカーも、強引な攻めを避け、ロースコアの試合を着実に取っていく戦術に出るのではないか。ただ、マッカラーズが戻れないようだと、ブルペンの総動員はやむを得ないだろう。そのときは乱戦に持ち込んで打ち勝つほかあるまい。
ちなみに両チームは、アストロズがナ・リーグ中地区に所属していた時代に、NLDSで5度顔を合わせた。1997年、99年、01年はブレーヴスが圧勝し、2004年と05年はアストロズが制している。両者ともまったくの別チームとなった今年は、どんな目が出るのだろうか。攻撃力ではアストロズが優勢だが、ブレーヴスには勝ち癖がついているし、意外な投高打低現象も見られそうな気がする。僅差の接戦を期待しよう。