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「清原さんは真っ直ぐで。イチローさんは持っているもの全部出して…」引退・松坂大輔が語っていた“天才たちの抑え方”

posted2021/10/25 17:15

 
「清原さんは真っ直ぐで。イチローさんは持っているもの全部出して…」引退・松坂大輔が語っていた“天才たちの抑え方”<Number Web> photograph by Getty Images

日米通算で61打席の対戦があった松坂大輔とイチロー

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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 松坂大輔投手の引退会見を聞いていて、いろいろ思いを巡らせた人は多かったと思う。その後、SNSで日本やアメリカで彼を取材したメディアの先輩諸兄の方々のメッセージを目にしては、メディアにとっても彼はやはり特別な存在なのだと実感する日々だ。

「23年……本当に長くプレーさせてもらいましたけど……。半分以上は故障との戦いだったんだと思います。最初の10年があったから、ここまでやらせてもらえたと思ってますし」

 引退会見で彼自身がそう言った時、自分が取材したのは「最初の10年」の次の数年間であり、彼が言う「周りの人が思っている以上に苦しい」時期だったとあらためて思い知った。青いライオンズのユニフォームを着ていた頃や、侍ジャパンのエースとして活躍したWBCも取材した。レッドソックス時代も番記者の代役で取材したことがあるはずなのに、心に強く残っているのはやはり、マイナーリーグやプエルトリコで投げていた頃の彼の姿だ。

「あなたにとってイチローとは?」の問いに少し考えてから…

 2013年の夏、彼はオハイオ州の州都コロンバスを本拠地とするインディアンスの傘下のマイナーAAA級、クリッパーズというチームでプレーしていた。当時、イチローが日米通算4000安打の達成を目前としていたこともあり、「あなたにとってイチローとは、どういう存在なのか?」と尋ねた。すると彼は少し考えてから、こう答えた。

「自分が今、持っているものをすべて出して、勝負したい人です」

 口元は少し笑っているように見えたが、視線は強かった。まるで「僕の言っている意味、分かりますか?」と問いかけているように。

「たとえば、清原さんは真っ直ぐで抑えたいと思うバッターなんです。理由はうまく説明できないけど、真っ直ぐで勝負したくなるのが清原さんなんです。でも、イチローさんは自分が今、持っているものを全部出して抑えたい。そう思わせてくれるバッターなんです」

【次ページ】 “松坂対イチロー”の物語

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