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「J1のベンチよりJ3のスタメン」「“ここ”じゃなくて“このあたり”」佐藤寿人が語る《ゴールを獲るための思考法》
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byJinten Sawada/AFLO
posted2021/10/11 11:02
日本代表で最も印象に残っていると語るのが2006年エクアドル戦のゴール。三都主アレサンドロのクロスボールにピンポイントで合わせた
「ストライカーの点の取り方って、大まかにいうと4つに分けられると思うんです。クロスからのゴール。パスからのゴール。こぼれ球からのゴール。あとは、自分がドリブルで仕掛けてからのゴール。ぼくの場合、ドリブルからのゴールはほとんどありませんから、パサーとの関係でいうと、まずクロスとパスをどうもらうかっていうのが大事になってくる」
佐藤の「もらい方」は、一般的なストライカーとは少し違っていた。
「よく、ピンポイントクロスって言い方するじゃないですか。あれ、結果的にそうなるものであって、ストライカーがクロスを出す人間に求めちゃいけないものだと思うんです」
極めて精度の高いクロスを入れようと思えば、パサーはどうしても慎重になる。中を見て、相手を見て、細心の注意を払ってクロスを入れる。佐藤からすれば、その時間と考え方が無駄だった。
「中はいつ、外はどこ、でいいと思うんです。中で待つ人間はタイミングだけを要求して、あとは“あのあたり”に入れてもらう。ぼくのことは見なくてもいい。この空間、あのあたりに入れてくれれば、あとはぼくが走るコースや速さで調整してピンポイントにする」
つまり、佐藤にとってのピンポイントは、目的ではなく結果論だった。
三都主アレサンドロに伝えた「このあたり」
彼が最も印象に残る日本代表でのゴールは、三都主アレサンドロからのクロスをピンポイントで合わせたエクアドル戦(2006年3月30日)のゴールだが、このゴールには伏線がある。
「同じような位置から同じようなクロスって場面がゴールの少し前にあったんです。そのとき、三都主は明らかにピンポイントで合わせようとしてたんで、言ったんです。“ここ”じゃなくていい、“このあたり”に入れてくれって」
言われた三都主も戸惑っただろう。自分のタイミングで正確なクロスを要求してくるストライカーは珍しくないが、佐藤寿人は、乱暴な言い方をすれば「もっと雑でいい」と求めているのである。