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「スケボー→スノボーは“茨の道”以上」 平野歩夢は半年後の北京五輪で金メダルを獲れるか?<現在の世界王者は19歳戸塚優斗>
posted2021/08/17 17:00
text by
野上大介Daisuke Nogami
photograph by
JMPA
8月5日に行われた東京五輪スケートボード・パークに出場した平野歩夢は予選14位と、8名の枠が用意された決勝に駒を進めることができなかった。それでも本業であるスノーボードを彷彿とさせる高いエアを決めるなど素晴らしい滑りを披露し、多くの人々の心を動かした。
「終わっても終わってないみたいな挑戦の流れですね」
前人未踏の二刀流ライダーとしての挑戦について、大会直後にこう語った平野。自身のスコアを塗り替えるため“ゴン攻め”した3本目のランで転倒した瞬間、半年後に控えている北京五輪に向かうゲートが完全に開いた。ただ、スノーボード・ハーフパイプで悲願の金メダルを目指す道は、東京五輪の1年延期によって“茨の道”どころの話ではなくなっている。
3年前の平昌五輪で見せた“最高難易度のラン”
ソチ五輪に続き平昌五輪で2大会連続となる銀メダルを獲得した平野のランは、当時のハーフパイプ最高難度だったと断言できる。ダブルコーク1440(縦2回転と横4回転を同時に行う技)とダブルコーク1260(縦2回転と横3回転半を同時に行う技)をそれぞれ左右の壁で連続して決め、なおかつそれらを4連続とした。
対する金メダリストのショーン・ホワイトのランは、それぞれの連続技の間に540(横1回転半)を入れて“呼吸”を整える演技構成だった。バックサイド(進行方向に対して背中側)の壁で行うダブルコーク1260の代わりに、より縦方向への回転軸が強いダブルマックツイストを組み込んでおりトリック(技)の違いはあったものの、縦2回転・横3回転半という回転数に変わりはない。
「1440とか1260のスピンになってくると息継ぎしている時間もない」と平野はこれらの大技について説明してくれたことがあるのだが、この言葉を踏まえれば理解が深まるのではないだろうか。
平昌で緊急搬送…平野を追う19歳が急成長
このように圧倒的な実力を誇っていた金銀メダリストの両名がスケートボードに乗り替えて東京五輪挑戦を表明してから2シーズン(その後、ショーン・ホワイトは挑戦を断念)、平昌五輪銅メダリストのスコッティ・ジェームスがハーフパイプ界の王者に君臨。その2番手には、当時16歳で挑んだ同五輪決勝で担架で搬送されるほど激しく転倒し途中棄権となった戸塚優斗がつける格好だった。
それでもこの時点では、平昌五輪での平野とホワイトの争いを超える領域には至っていなかった。