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「スケボー→スノボーは“茨の道”以上」 平野歩夢は半年後の北京五輪で金メダルを獲れるか?<現在の世界王者は19歳戸塚優斗>
text by
野上大介Daisuke Nogami
photograph byJMPA
posted2021/08/17 17:00
半年後に迫る北京五輪で“悲願の金メダル”を目指す平野歩夢。誰も挑戦しなかった“二刀流ライダー”の挑戦は続いている
スケボーの2年半で鍛えられた貴重なスキル
「スケートボードの場合はちょっとしたズレによって(ボードに)乗る位置も変わってくるし、膝の曲げ方などが(スノーボードとは)全然違うから、そういう意味ではこれまでのスノーボードの滑りよりも、さらにいろいろな状態で乗れるようになっています。たとえば、前(進行方向)に詰まったとしても調節できるというか」
スノーボードのメリットとして、足がボードに固定されているからこそ高く飛べ、多く回すことができる。反対にデメリットとしては、スケートボードやサーフィンのようにフットポジション(ボード上に置く足の位置)を変えることができないため、滑りの状況に応じて適した位置に乗ることができない。
足が板に固定されたスノーボードに乗り続けていても絶対に体得できない、足首から上体にかけての動きがスケートボードに集中した2年半で磨かれたということだ。だからこそ、先述のフロントサイド・ダブルコーク1260と1440の着地に耐えられただけでなく、スケートボードを通じて研ぎ澄まされた“踏み”により加速させて次のヒットでも高く飛ぶことができた。
「パーク種目はプッシュ(前足をボードに乗せて後ろ足で地面を蹴って漕ぐ動作)ができないから、ノープッシュで最後まで(減速させずに)滑りきらないといけない。踏む位置だったり踏むタイミングはパークによっても変わるし、ラインひとつで決まるようなところもあるんです。スケートボードのほうが比にならないほど難しい」
ブランコを立ち漕ぎするときの膝の動きを想像してほしい。それを横方向に行うパンピングと呼ばれる動作のことを平野は言っている。
“悲願の金メダル”なるか?
ただ北京五輪で金メダルを獲得するためには、まだ彼が持っていない新たなる“大技”が必要だ。これまで習得してきたトリックには、数年間かかったものもある。容易なことではない。