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「スケボー→スノボーは“茨の道”以上」 平野歩夢は半年後の北京五輪で金メダルを獲れるか?<現在の世界王者は19歳戸塚優斗> 

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野上大介

野上大介Daisuke Nogami

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posted2021/08/17 17:00

「スケボー→スノボーは“茨の道”以上」 平野歩夢は半年後の北京五輪で金メダルを獲れるか?<現在の世界王者は19歳戸塚優斗><Number Web> photograph by JMPA

半年後に迫る北京五輪で“悲願の金メダル”を目指す平野歩夢。誰も挑戦しなかった“二刀流ライダー”の挑戦は続いている

 しかし北京五輪のプレシーズンとなる2020-21シーズン、戸塚が化けた。コロナ禍の影響で大会の数は減ってしまったが、「X GAMES」「FIS世界選手権」、そしてW杯2戦の全4戦で優勝。2019-20シーズンの最終戦となった伝統の一戦「US OPEN」から数えれば5連勝。王者ジェームスの牙城を崩したのだ。

 戸塚の武器は、平野同様に高さのあるエアと、回転軸が複雑な高回転トリックの引き出しの多さにある。平野とホワイトが不在の3シーズンで、世界トップレベルの基軸として新たに、ジェームスの専売特許だったスイッチバックサイド(通常のスタンスとは反対向きから背中側へ回す)ダブルコーク1260が加わり、さらに戸塚はそれだけでなくキャブ(通常のスタンスとは反対向きから腹側へ回す)ダブルコーク1260も完璧に操れるまでに成長。加えて、優勝を飾った「X GAMES」では自身のベストランとは別に、平昌五輪で平野が決めた同ルーティンを成功させた。

わずか半年の調整で臨んだ全日本選手権

 スケートボードの東京五輪日本代表選考の最終予選に位置づけられる国際大会「DEW TOUR」が5月に開催されたのだが、その1カ月ほど前、平野はスノーボードに乗り北海道・札幌の地で宙を舞っていた。北京五輪に出場するにはW杯への派遣資格を得るために全日本スキー連盟の強化指定選手に選ばれる必要があり、その選考会である全日本選手権に出場しなければならなかったからだ。その準備として昨秋スイスに渡り、一時的にスケートボードを休止して雪上復帰を果たしていた。

 2年半以上のブランクがあり、わずか半年足らずの調整期間で挑んだ全日本選手権は、世界王者の戸塚に次いで2位。結果はさることながら、その中身に驚かされた。

 例年よりも融雪が早いうえに4月中旬だったため、ハーフパイプのコンディションはベストからはほど遠く、大技を繰り出すには厳しい状況だった。そうした中で、フロントサイド・ダブルコーク1260と1440の着地で大きくバランスを崩すも、減速させることなく次のヒットにしっかりとつなげ、ラストヒットに放ったバックサイド900(横2回転半)はハーフパイプのボトム(底)側に大きく弾かれてしまい万事休すかと思いきや、リカバリーで雪面に手をつくことなく成功させたのだ。語弊を恐れずに言えば、平野以外のスノーボーダーであれば間違いなく転倒していただろう。

【次ページ】 スケボーの2年半で鍛えられた貴重なスキル

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