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ブラジル柔道男子代表が日本人女性・藤井裕子を監督に据えた真相 「パラダイムを壊してほしい、と伝えた」《東京五輪》 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byAFP/AFLO

posted2021/07/14 17:01

ブラジル柔道男子代表が日本人女性・藤井裕子を監督に据えた真相 「パラダイムを壊してほしい、と伝えた」《東京五輪》<Number Web> photograph by AFP/AFLO

2018年頃の藤井裕子監督。そのキャリアは非常にユニークだ

藤井監督:メダルの数のような具体的なものはない。選手たちには、これまでの努力の成果を存分に発揮し、持てる力をすべて発揮してほしい。私自身は、彼らに晴れ舞台を用意することだけを考えている。

監督としてこれほど頼もしい選手は……

――特に期待する選手はいますか?

藤井監督:代表チームの主将のような役割を果たしてくれているのが、ラファエル・シウバ。あれだけの実績を持つベテランでありながら、誰よりも良く練習し、綿密に体調を管理する。

 重量級の試合は柔道の競技日程(7月24日~31日)の後半に組まれているので、7月13日の第二陣でブラジルを出発することになっている。でも、彼は「7月8日の第一陣で出発させてもらえないか」と聞いてきた。家族もいるのに、あえて早めに現地入りして万全の準備をしたい、という姿勢に感銘を受けた。彼の存在そのものが、代表チーム全体を盛り上げてくれる。監督として、これほど頼もしい選手はいない。

◆ ◆ ◆

 7月8日、柔道代表の第一陣がサンパウロ国際空港を出発した。全員が空港内で抗原検査を受け、陰性だった。

 柔道男子のダニエル・カルグニン選手は、「こうして東京へ向けて出発することができて、とても嬉しい。五輪に参加することは、すべてのトップアスリートの夢。ここへ辿り着くまでに多くの困難を乗り越えてきたが、ここからが本当の戦いだ。7月25日の試合日に体調をベストに仕上げる一方で、コロナに感染しないよう最大限の注意を払う。それは自分のためであり、僕たちを受け入れてくれる日本の人々のためでもある」と笑顔で語った。

 一行は10日に成田空港へ到着し、事前合宿を行なう浜松へ移動した。

 間もなく、東京五輪が開幕する。それから、どんなことが起きるのか。なかなか想像するのが難しいが、ひとつだけ確かなことがある。それは、これまでのどの五輪とも異なるドラマの数々が繰り広げられるに違いない、ということだ。

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