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ブラジル柔道男子代表が日本人女性・藤井裕子を監督に据えた真相 「パラダイムを壊してほしい、と伝えた」《東京五輪》
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAFP/AFLO
posted2021/07/14 17:01
2018年頃の藤井裕子監督。そのキャリアは非常にユニークだ
カルグニン:6歳で柔道を始め、このスポーツに魅了され、五輪出場を目指してきた。その目標を達成したが、これに満足することなく、夢舞台でのメダル獲得を狙っている。
実は、今年5月、僕は新型コロナウイルスに感染してしまった。倦怠感がひどく、匂いも感じなくなり、完治して練習を再開できるまでに約3週間かかった。そのせいで、6月にブダペストで行なわれた世界選手権に出場できず、ポイントを稼いでさらにランキングを上げる機会を失った。
それだけに、コロナの怖さは身に染みている。一度、感染したから免疫ができているだろうし、ワクチンも接種した。それでも決して気を緩めることなく、万全の対策を続けて大会に臨む。
日本の阿部一二三選手ら強敵は多いが、せびとも表彰台に上がり、ブラジルにメダルを持ち帰りたい。
――ブラジルの柔道は、栃木県足利市出身で早大柔道部で活躍した後、ブラジルへ移住して国籍を取得した石井千秋が、1972年ミュンヘン五輪の男子93kg級で初のメダル(銅)をもたらしました。これを含め、五輪10大会で金4、銀3、銅15の計22個のメダルを獲得。とりわけ、2012年ロンドン五輪で金1、銅3、2016年リオ五輪では金1、銅2と躍進しています。競技人口が約200万人(注:日本は約16万人でブラジルの12分の1以下)という世界最大の柔道大国ということもあり、国際的にも注目されています。
最近の国際大会では男女混合団体戦、男子100kg超級のラファエル・シウバ選手、女子78kg級のマイラ・アギアール選手(2012年ロンドン五輪、2016年リオ五輪でいずれも銅メダル)らが好成績を残しています。東京五輪での目標は?
ネイ・ウィルソン強化部長:1984年ロサンゼルス五輪以来、常にメダルを獲得してきた。すでに話したように、パンデミックのせいで大きなハンディを負ったが、東京でも是非ともメダルを獲得したい。
日本人女性の藤井裕子氏に監督を依頼したワケ
――バンデルレイ会長は、2017年末にブラジル五輪委員会のトップとなる前はブラジル柔道連盟の会長でした。2012年ロンドン五輪で英国柔道代表を指導していた藤井裕子さんを技術コーチとして招聘することを五輪委員会に提案し、了承を取り付けた(注:コーチ契約を結ぶのは、柔道連盟ではなく五輪委員会であるため)。そして、2018年には五輪委員会会長として、藤井さんと柔道男子代表の監督としての契約を結びました。
主要スポーツの男子代表の監督を女性が務めるのはブラジルでは前例がなく、世界でも異例ということで、欧米メディアでも大きく取り上げられました。これらの経緯を振り返っていただけますか?