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ブラジル柔道男子代表が日本人女性・藤井裕子を監督に据えた真相 「パラダイムを壊してほしい、と伝えた」《東京五輪》
posted2021/07/14 17:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
AFP/AFLO
――パンデミックは、東京五輪を目指すブラジル人トップ・アスリートにどの程度の影響を与えたのでしょうか? また、悪影響を最小限に留めるため、ブラジルのスポーツ関係者はどのような努力や工夫をしたのでしょうか?
ブラジル五輪委員会会長の「知恵を絞った結果」とは
バンデルレイ会長:ブラジル国内のトップ・アスリートは、国内外のクラブと契約し、そこを拠点として練習を積みながら、試合や競技会に出場する。昨年3月中旬、新型コロナウイルスの感染拡大によって、国内のほぼすべてのクラブが地方自治体から閉鎖を命じられた。
国内外の試合や競技会も、ほぼすべて中止された。このため、アスリートは自宅などプライベートな場所で体調を整えるしかできなくなった。試合や競技会がなくなって東京五輪も1年間延期された。多くのアスリートが、あらゆる意味で困難な状況に追い込まれた。
しかし、東京五輪の延期が決まったとはいえ、1年後には開催される可能性がある。いつまでも手をこまねいているわけにはいかない。
そこで、我々は知恵を絞った結果、元宗主国でブラジルとは特別な関係にあり、新型コロナウイルスの感染が欧州では比較的軽かったポルトガルとその五輪委員会に助けを求めることにした。
「ヨーロッパ・ミッション」と銘打って昨年後半、ポルトガルに陸上、水泳、柔道、ボクシングなど24競技の238選手を送り込んだ。各々の団体が、ポルトガル各地で長期合宿を行なった。
ブラジルでは試合や競技会への出場はおろか練習すらできない状況で、選手たちはポルトガルの優れた練習環境で思う存分練習し、試合や競技会に参加することもできた。
昨年後半からは、次第に国内でも練習を行なえるようになり、国内外での試合や競技会も再開された。
とはいえ、ブラジルのすべてのアスリートがパンデミックによるハンデを完全に帳消しにできたわけではない。リオ五輪で金7、銀6、銅6の計19という過去最多のメダルを獲得したが、東京五輪は我々にとって極めて厳しいチャレンジとなる。