熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ブラジル柔道男子代表が日本人女性・藤井裕子を監督に据えた真相 「パラダイムを壊してほしい、と伝えた」《東京五輪》
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAFP/AFLO
posted2021/07/14 17:01
2018年頃の藤井裕子監督。そのキャリアは非常にユニークだ
バンデルレイ会長:2012年ロンドン五輪後、藤井さんをブラジル柔道代表のコーチに招聘するというアイディアは、ネイ・ウィルソン強化部長らから出てきた。「柔道の基本を、選手に叩き込んでくれる。インテリジェンスがあり、コミュニケーション能力が高い。人間的にも素晴らしい」と聞いていたが、実際に会ってみたらその通りだった。
2016年リオ五輪では女子57kg級のラファエラ・シウバの金メダル獲得に貢献してくれ、その手腕を評価して、五輪後も引き続き指導をお願いした。女子選手のみならず、男子選手にも適切な指導をしてくれており、選手からの信頼も厚かった。
その後、私は柔道連盟の会長を退任して五輪委員会会長となったわけだが、2018年に柔道の男子代表の監督が辞任した際、ネイ・ウィルソン強化部長らから「藤井コーチを男子代表監督に昇格させたい」という要望を受けた。私も彼女の仕事ぶりを高く評価していたから、即座に賛同した。
彼女に会長室へ来てもらい、「あなたは、外国人であってもブラジル柔道のために全身全霊で尽くすことで、これまでのパラダイム(ある時代に支配的な考え方)を打ち壊してくれた。今度は、女性には男子トップ選手の指導はできない、というパラダイムを壊してほしい」と伝えた。
藤井監督の感極まった表情を見て……
――その言葉を聞いて藤井さんは感激し、手が震えたと聞きました。
バンデルレイ会長:彼女の感極まった表情を見て、「きっと素晴らしい仕事をしてくれる」と確信した。
――ネイ・ウィルソン強化部長、これまでの藤井さんの仕事ぶりをどう評価していますか?
ウィルソン強化部長:柔道の指導は短期間に結果が出るというものではないが、とても良くやってくれている。常に全力で選手をサポートするのだ、という気持ちに溢れており、期待していた通りの仕事をしてくれている。
――藤井監督、東京五輪での目標は?