濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「手も足も出なくて...」新団体GLEATで“女優レスラー”福田茉耶が味わった“恐怖の4分50秒”…それでも「光栄です」と語ったワケ
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/07/07 11:01
橋本千紘の逆エビ固めに、福田茉耶はロープエスケープ
それでも自分だけの道があるはず、一回ダメでもそこで終わりじゃない。常に自分に言い聞かせてきたという。
「やってきたことは絶対に無駄じゃない、悔しかったことも悲しかったことも全部、何かに活かせる。そう思ってきました」
UWFとの出会い
今はアクション、スタントのチームに入って修行を積んでいる。同時に「アクトリング」にも参加。“女優によるプロレス団体”アクトレスガールズのイベントで、リングを使った演劇だ。演目の中の“アクションシーン”としてプロレスが取り入れられている。
福田はレスラー志望ではなく、あくまで役者としてキャストに加わった。ただアクトリングでの“演劇内プロレス”の練習は、空手やアクションの経験がある彼女には物足りないものだったようだ。
「自分の順番を待っている時に別の動きの練習をしたり、自分でいろいろやってました。それを見て、アクトレスガールズの坂口(敬二)代表がLIDET UWFを紹介してくれたんです」
LIDET UWFとは、GLEATの“格闘プロレス”部門。福田の指導は田村潔司が務めることになった。GLEATエグゼクティブ・ディレクターの田村は1989年にUWFでデビューし、UWFインターナショナル(Uインター)、リングスでトップ選手として活躍。PRIDEなど総合格闘技のリングにも上がった。
UWFとは団体名であり、またルール、プロレスのスタイルも指す。 田村はUWFへのこだわりが強く、所属していたUインターが新日本プロレスとの対抗戦に打って出た際には、団体の動きに背を向け出場しなかった。ファンはそのコスチュームから、彼を“赤いパンツの頑固者”と呼ぶ。
UWFルールではダウン、ロープエスケープが減点となり、持ち点がゼロになると負け。ルールを厳密に運用するから場外乱闘や凶器攻撃はない。ロープに走らず、派手な飛び技も使わず、キックや関節技で決着する。“格闘プロレス”と呼ばれる所以だ。GLEATでは、親会社の名前からとってLIDET UWFと呼ぶ。社長である鈴木裕之も、そこまでUWFに思い入れがあるのだ。
7.1GLEAT旗揚げ大会、前半4試合は通常ルールの試合で、後半4試合がLIDET UWF。福田vs.橋本もその一つで、唯一の女子マッチだった。
世代的にUWFを知らなかった福田だが、田村から話を聞き、過去の映像を見て「これが自分のやりたかったことだ」と感じた。「本物の技」を使ったリアリティのあるプロレス。闘いであり、同時に表現でもある。通常ルールのプロレスとも、キックボクシングや総合格闘技とも違う新しいジャンルだと福田は受け止めた。それが、空手時代から強さと同時に見せること、伝えることを考えてきた自分に合っているとも思えた。
「やられて覚えろ」
「私は空手の中でも型のほうが得意なんです。型って教本の通りにやるだけじゃないんですよ。上手い人の型はそれぞれに個性があって、実際に相手と闘っているように見えるんです。客席で見ていても引き込まれて、会場に一体感が生まれる。そこは演劇にも似てるなって。そういう世界が好きで」