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「手も足も出なくて...」新団体GLEATで“女優レスラー”福田茉耶が味わった“恐怖の4分50秒”…それでも「光栄です」と語ったワケ
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/07/07 11:01
橋本千紘の逆エビ固めに、福田茉耶はロープエスケープ
「手も足も出なくて......こんなに何もできないとは思いませんでした。途中、一瞬でも“ダメかもしれない”と思ってしまったことが一番悔しいです。最後まで気持ちだけは負けずに前に出たかったのに。こんな圧力は感じたことがなくて......」
「期待はしてないよ」
強さを求める練習を重ねて、田村からプロレスの“見せる(魅せる)、伝える”要素についてレクチャーされたのは試合数日前のことだった。その上であらためて、福田は「これ(UWF)は本当に強い人じゃないとできない」と覚悟を決めたそうだ。
そして実際にトップ選手と闘ってみると、涙が出るほど“強さ”の違いを感じた。
「期待はしてないよ。最初からできると思ってないから。あなたが一流の試合ができるようになるまでには5年、10年とかかる。今は目指しているものの途中に試合があるだけだと思って、できることをやればいい」
練習中、田村からそう言われたと福田。その言葉は気負う彼女をリラックスさせるための言葉であり、同時に単純な事実でもあったわけだ。見せることを意識するまでもなく、福田が感じた恐怖は観客に伝わってしまった。あるいはそれがマッチメイクの狙いであり“新人教育”だったのかもしれない。試合後のコメントを終えると、福田は「もっと強くなりたい......」と声を絞り出した。
逆に橋本は、UWF初体験を「楽しかった」と振り返る。
「橋本千紘が新しく闘う場所、来ちゃったんじゃないのこれ?」
さらに「こういうスタイルもあるということで、女子レスリングからも(プロレスに)きてほしい」、「(UWFは)めちゃくちゃレスリングが使えますね。自分は打撃ができないんですけど、総合もやってみたくなりました。橋本千紘の新しい扉が開きました」とも。もし橋本が今後もUWFスタイルの試合を続け、総合格闘技にも進出したら強烈なインパクトを残すに違いない。彼女自身にとっても、業界にとっても“橋本千紘、UWF挑戦”は大きな出来事だった。