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12歳の“中学生レスラー”咲蘭が涙のデビュー戦で「喜怒哀楽が全部出ちゃう」 キッズレスラー“ならではの魅力”とは?
posted2021/07/10 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
子供だってプロレスはできる。
7月4日のアイスリボン、川口SKIPシティ大会で、新人の咲蘭(さらん)がデビューした。2009年2月21日生まれの12歳、中学1年生だ。
2009年生まれの“キッズレスラー”
「私が(2008年に)デビューした後に生まれたってことですよ。自分のキャリアより若い子がデビューするなんて、プロレスは長くやると面白いことがありますね」
そう語ったのはアイスリボンの取締役選手代表である藤本つかさ。プロレス界における咲蘭の保護者のような存在だ。
咲蘭がアイスリボンの一般向けプロレスサークルで練習を始めたのは、昨年11月のこと。母親が桜花由美(プロレスリングWAVE)の友人で、親子で試合を見に行ってレスラーに憧れた。アイスリボンを選んだのは、これまでにも(中学生以下の)キッズレスラーをデビューさせてきた歴史があるからだ。
「うちはプロサー(プロレスサークル)があるから一歩目を踏み出しやすいところもあると思います」と藤本。4月からは「練習生ぶどう」として、第1試合前のエキシビションマッチを重ねてきた。
「スリーパーをガッチリ決めて先輩が泣いてましたから(笑)」
6月になってデビューが決まり、デビュー戦前日にもエキシビション。そこでリングネームが披露された。「咲」は「笑」の古字であり、「蘭」の花言葉は「幸福が飛んでくる」。母親の発案だそうだ。おとなしくて笑顔や感情表現が苦手だから「自分も周りも幸せな笑顔に包まれるように」という願いが込められているという。
「身体も小さいですし、普通の12歳よりおとなしいかもしれないですね」と藤本。ただ相当な負けず嫌いでもあるようだ。
「すぐ上の先輩の真白(優希)とスパーリングをやった時、スリーパー(ホールド。裸絞め)をガッチリ決めて真白が泣いてましたから(笑)」
最初のエキシビションマッチでは、緊張して始まる前から泣いていた。バックヤードで春輝つくし(彼女もキッズレスラー出身だ)に「大丈夫、頑張って」と声をかけられ、そこで涙が止まらなくなったらしい。