濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「手も足も出なくて...」新団体GLEATで“女優レスラー”福田茉耶が味わった“恐怖の4分50秒”…それでも「光栄です」と語ったワケ
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/07/07 11:01
橋本千紘の逆エビ固めに、福田茉耶はロープエスケープ
UWFは、新日本プロレスから派生して作られた団体だ。その“思想”の源流には、プロレスの強さを世間に示すべく異種格闘技戦を闘った創設者、アントニオ猪木の存在がある。
一方、現在の新日本を象徴するエピソードとして知られているのは、道場から猪木の写真パネルを外したことだ。かつて猪木はPRIDEとも関わり、選手を送り込んだ。そんな“猪木路線”と決別し、プロレスらしいプロレスを徹底することで新日本は復興した。それが定説だ。
だがそれは“強さの追求を放棄した”ということではなかったのだろう。レスリングも関節技も練習するのが当たり前、普段からひけらかさないだけ。それが、現代的な“新日本イズム”のようにも思えた。
昭和からプロレスを見てきたファンほど、SHOvs.伊藤に歓喜したのではないか。UWFスタイルは派手な大技が出ないから、選手の“地金”のようなものが見えやすい。そしてSHOの地金は、ピカピカに磨かれていた。
「いつか田村さんと同じ赤いコスチュームを」
スポーツであり格闘技であり、しかし大前提として観客ありきのエンターテインメントであるプロレスにおいて、“強さ”をどこまで重視するかは人それぞれだ。どんなスタンスも否定されるべきではない。ただ橋本千紘やSHOのように、UWFスタイルの闘いをやろうと思えばいつでも準備ができているというタイプの選手もいるのだ。
大会を終えて、かつて新日本との対抗戦に交わらず“純U”を貫いた田村潔司は言った。
「伊藤が勝ったら“新日本あんなもんか”と言いたかったんですけど。新日本をあんまり認めたくないけど、ああいう選手もいるんだなと」
そう、いるのだ。現在の“U系”イベントのトップランナーである『ハードヒット』の会場で、20代のある選手が言っていた。
「今の若い世代にも、プロレスの中で強さを追求してる選手がいるってことを知ってほしいんですよね、いろんな人に」
福田茉耶は、2021年に初めて知ったUWFについて「これが広まったら、やりたいという人がたくさん出てくると思います。それにデビューから関わることができて光栄です」と言う。彼女の試合コスチュームは紺色のラッシュガードにスパッツ、トランクス。すべて既製品だろう。「いつか田村さんと同じ赤いコスチュームを着たい」から、今はあえてシンプルなものにしているのだそうだ。
時代はめぐる。今また、プロレス界はUWFを必要としているのかもしれない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。