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高校球児の“流行アイテム”最前線…新入生の3人に1人が白スパイク「在庫がありません」&一瞬で売れる“キャッチャーミット”
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2021/04/06 17:03
優勝した東海大相模・石田隼都投手。ベージュのグラブに白スパイクを着用している
星 グラブ全体でいうと、ゼットのシェア率はさほど高くない。でもキャッチャーミットだけに絞ったら、ダントツです。昔からゼットのミットは評判がよかったのですが、ここにきて、またグンと評価を上げた気がします。
――簡単に言うと、ゼットのミットと、他のグラブはどこがどう違うのですか。
星 まずは形状ですね。親指の部分がほどよく湾曲していて、親指の付け根の肉の上にちょうどいい感じで乗り、かつ、親指が先端まで効きやすい。あと、種類が豊富で、型付け(手にフィットするよう型を整える)もしやすい。最近のキャッチング理論では、親指の使い方が重要になります。親指をうまく使えるとミットがブレにくい。特に低めのボールが下に落ちなくなります。ゼットのミットの進化で、捕りにいくのではなく、「吸い込まれるキャッチング」に変わりました。今、メジャーにおける最前線のフレーミング(キャッチング)もまさにそんな感じです。それがもう日本の高校野球まで浸透してきた感じがします。ゼットの中でも特に巨人の小林誠司捕手モデルは、高校生から絶大なる支持を得ています。月に3個とか4個入ってきても、あっという間に売れてしまう。小林型は万能タイプなので、誰にでも使いこなせる。福岡大大濠(福岡)の川上陸斗捕手、東海大菅生(東京)の福原聖矢捕手、東播磨(兵庫)の田中慎二捕手は、この小林型を生かした惚れ惚れするようなキャッチングをしていました。
――そういえば、初戦で福岡大大濠と対戦した大崎(長崎)の打者は、何度も、ストライクのコールに「え?」って顔をしていたんです。川上君の力もあったんですね。
星 いい捕手、いいミットは、ピッチャーを救います。2007年夏、佐賀北と広陵の決勝戦の8回裏、際どいボール判定を受けたことで、佐賀北の逆転満塁ホームランが生まれ、佐賀北が初優勝を飾りました。あの時の広陵の捕手は小林選手でした。彼が当時、今のミットを使っていたら……。どうなっていたんでしょうね。