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「泣いても泣いても…」坂本花織が世界選手権2位で抱えた“悔しさの正体”…過去にもあった「屈辱的」な敗北からの復活劇
posted2025/04/02 17:13

世界選手権で2位となった坂本花織は、悔しさを隠さなかった
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JIJI PRESS
「泣いても泣いても涙が止まらないぐらい」
その言葉と、言葉通りの表情が坂本花織の心境を象徴していた。
4連覇がかかっていた坂本
アメリカ・ボストンで行われたフィギュアスケートの世界選手権。坂本には大会4連覇が懸かっていた。
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そのスタートとなるショートプログラムは「悔しいです」と言う演技となった。
後半に組み入れていた3回転フリップ-3回転トウループの連続ジャンプはフリップが2回転に。スピン、ステップでも最高のレベル4をそろえることができなかった。
ただ、その中でも失敗を大きなものにはしなかったこと、連続ジャンプで言えば1つ目でミスしても2つ目に3回転をつけるあたりに、地力があった。
順位としては5位となったが、得点は71.03点で、トップに立ったアリサ・リュウ(アメリカ)との得点差は3.55。十分、逆転できる範囲内にあり、実際、昨年の世界選手権でも1位と3.69点差の4位からフリーで逆転し優勝を飾っている。
「70点を切ると思っていたので、最終組に残れてほっとしています」
演技を終えた坂本は、何度も飛びはねた
「自分の演技をすれば結果もついてくる」と誓い、フリーに臨んだ。
そのフリー『シカゴ』は、圧巻だった。ジャンプで回転不足を1つとられた。終盤のジャンプにも4分の1回転足りないとみなされたものがあった。でもそれをかき消すほど曲の世界に入り込み、プログラムの世界を存分に表現した。観客席では、演技が終わる前から人々が立ち上がり、スタンディングオベーションが起こった。惜しみない称賛が寄せられた。演技を終えたあと、坂本が何度も跳びはねたのは自然な流れだった。