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田中碧の“皇帝感”に万能な板倉滉… 東京五輪世代レギュラー争いは未招集組を含めてハイレベル【最新序列図あり】
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byNaoki Morita/AFLO,JMPA
posted2021/04/01 06:01
プレーだけでなく中盤での声掛けも貫禄十分だった田中碧と、CB・ボランチで万能性を見せた板倉滉
「小学校から知っている」板倉との関係性も絶妙
珠玉のパフォーマンスは後半に入っても落ちることがなく、その存在感たるや、チームの王様、五輪代表の皇帝……いや、形容はなんでもいいのだが、とにかく田中を中心にチームが回っていたのは間違いない。
出場停止のため第1戦を欠場したが、0-1で敗れた初戦にも田中が出場していたら、どうなっていただろうか――。そんな想像をせずにはいられなかった。
「碧のことは小学生時代から知っていますけど、上手くて、周りが見えていて、すごく気が回る選手。今日は碧が真ん中でボールをさばけていたので、僕は碧の邪魔をしないように、ひとつ前の相手が嫌がるポジションを取っていました」
こう振り返ったのは、川崎フロンターレアカデミーの先輩にあたり、ボランチのコンビを組んだ板倉滉である。一方、横内昭展監督は、特にその"声"を称賛した。
「碧は出場停止で1試合目に出られなかったから、彼なりに分析して2戦目に臨んでくれた。何かが起きたり、そういうところで彼はしっかりコーチングをしていた。1戦目が出場停止で、パワーが有り余っていた感じかな」
これまでの田中碧は絶対的な存在ではなかった
これまでの田中は、このチームにおける序列が低かったわけではないが、絶対的な存在というわけでもなかった。
2019年10月、敵地でのU-22ブラジル代表戦ではミドルシュートを2発叩き込み、大金星の立役者となったが、20年1月のU-23アジア選手権では2試合に先発したものの、チームは1分2敗とグループステージ敗退に終わり、田中自身も3試合目で一発退場となっている。
判定は疑問の残るものだったとはいえ、この時点ではまだチームを勝たせられる選手ではなかった。
ところが、コロナ禍を挟んでそれ以来となる今回のテストマッチでは、見違えるほどの存在感を発揮した。どのような思いでこの試合に臨んだのか。