JリーグPRESSBACK NUMBER

「何年経っても変わることはない」ベガルタ復帰の手倉森監督が明かす“3.11の記憶”と、“田中将大投手との縁” 

text by

戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2021/03/11 17:00

「何年経っても変わることはない」ベガルタ復帰の手倉森監督が明かす“3.11の記憶”と、“田中将大投手との縁”<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

ベガルタ仙台のホームスタジアム・ユアテックスタジアム仙台。サポーターの熱い声援が響く

「自分が戻ってきたのは、天に導かれたものだと思っています。前回の監督当時に『被災地の希望の光になろう、復興のシンボルになろう』と選手たちに話をして、被災地にJ1優勝のシャーレを届けると誓った。それが果たせないままベガルタを離れたので、僕自身は『8年前にやり残したことを今度こそやれよ』と言われている気がしてならないんです」

 21年の杜の都は、スポーツが熱い。12年のJ1でベガルタを過去最高の2位へ躍進させた手倉森監督が復帰しただけでなく、東北楽天ゴールデンイーグルスに田中将大が戻ってきたからだ。

 手倉森が頷く。

ADVERTISEMENT

「12年にベガルタがJ1で優勝争いをして、13年に楽天が日本一になった。そして、14年から自分はリオ五輪を目指すチームの監督になり、田中投手はメジャーへ旅立っていった。同じタイミングで被災地から世界へ飛び出していって、震災から10年目の今年に、『8季』ぶりに帰ってきた。お互いに切磋琢磨して、もう一度被災地のために力を『発揮』しろ、ということなのでしょう」

 得意のジョークで締めたが、すぐに表情を引き締める。

「地元の知人からは、田中投手の影響で野球のニュースにサッカーが押されていると言われる。やらなければいけない、と思わされます」

「我々の立場が厳しいことは、みんなが理解しています」

 21年のシーズンはドロー発進だった。サンフレッチェ広島とのアウェイゲームを、1対1の引分けで締めた。守備の中心のシマオ・マテが27分に退場しながら、後半終了間際のゴールで勝点1をゲットした。

 ホーム開幕戦となった第2節は、川崎フロンターレに1対5で大敗した。昨シーズンのJ1を圧倒的な強さで制し、今シーズンも横浜F・マリノスとセレッソ大阪を連破していた王者に、力の差をまざまざと見せつけられた。

 今シーズンのJ1は20チームで争われ、下位4チームがJ2に降格する。昨シーズン17位のベガルタに向けられる視線は、一様に厳しい。16年のリオ五輪に監督として、18年のロシアW杯に日本代表コーチとして関わった指揮官の存在も、他チームの警戒心を呼び覚ましている。

「我々の立場が厳しいことは、スタッフ、選手みんなが理解しています。でも、下位4チームが落ちることばかり気にかけていると、仕事がつまらなくなる。そうではなくて、ひとつでも上へ行くんだというポジティブなメンタリティで、より良いものを作り出していく。一つひとつの試合をしっかり戦って、勝点をとっていけば、そういうこと(降格)にはならない。自分たちを信じることが大事でしょう」

【次ページ】 得失点差「-9」でリーグワースト

BACK 1 2 3 4 NEXT
#ベガルタ仙台
#手倉森誠
#田中将大

Jリーグの前後の記事

ページトップ