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5日で決まった電撃トレードの真相…巨人・原辰徳監督が“未完の大器”を獲るために田口麗斗を出したワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shinbun
posted2021/03/03 17:30
原辰徳監督(左)とグータッチを交わすヤクルトから移籍した巨人・廣岡大志
実は先日アップした原監督のインタビュー(原辰徳監督が明かす桑田真澄コーチ就任の真相「最初から彼が素晴らしい野球人だとは思っていなかった。でも…」ほか2本)を行ったのは2月20日。まだ、今回のトレードの話が両球団の間で具体的に出る前のことだった。しかしそこで原監督が語った言葉の中に、巨人が決断に踏み切った理由がいくつかちりばめられていた。
まず廣岡にターゲットを絞った理由。
今回の廣岡獲得の背景として「坂本勇人内野手の後継」という声がある。もちろん長期的スパンで見れば、いずれそうなるという含みもあるだろう。ただ、第一義的にはもっと目の前の今年のチーム作りという視点があったはずである。
1つは今季の打線構成のポイントであるジャスティン・スモーク内野手とエリック・テームズ外野手の来日のメドが未だ立っていないこと。その2人が守る予定の一塁と外野のいずれも廣岡は守れる。そして更に外国人の合流後も見据えた視点は、インタビューでのいくつかの言葉で説明がつきそうだ。
1対1で“タイマン”を張れる集団に
「ウチでポジションが空いているとするなら、それはキャッチャーとセカンド」
「(吉川)尚輝は去年、100試合以上使っている。ただ彼は打席を重ねるごとにスケールがどんどん小さくなっていってしまった」
「デンとした野球をやるとしたら北村(拓己内野手)に期待している」
昨年の日本シリーズでの屈辱的な敗北を踏まえて、原監督が進めようとしているチーム改革は自立した選手集団の形成である。
自立した選手集団というのは、個々の選手がそれぞれでソフトバンクのパワーピッチャーと1対1で“タイマン”を張れる集団ということだ。
昨年まではチーム全体で塊となって相手を倒していく野球、監督の采配、用兵でチームの力をまとめて相手にぶつかっていく野球だった。しかしリーグ優勝のためには、そういう野球がベストだったかもしれないが、完全なリーグ間格差が生まれてしまったパ・リーグのチームを破るためには、もっと自立した選手の集団を作る以外に道はない。それが原監督の今季に向けた決断だったということだ。
そこでセカンドのポジション争いが激化するのだ。