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5日で決まった電撃トレードの真相…巨人・原辰徳監督が“未完の大器”を獲るために田口麗斗を出したワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shinbun
posted2021/03/03 17:30
原辰徳監督(左)とグータッチを交わすヤクルトから移籍した巨人・廣岡大志
インタビューで原監督がその二塁のレギュラー候補1番手にいるはずの吉川に投げかけた厳しい言葉には、もちろん期待も含まれている。ただ、期待はするが、信頼はしていない。
ある意味、いま巨人が開幕に向けてどうしても埋めなければならないピースは、この二塁手というポジションなのだという宣言でもあった。
そのためにキャンプでは北村を徹底的に鍛えた。そしてそれだけでは満足できずに、昨年もヤクルトで先発、途中出場を含めて15試合に二塁で出場している廣岡に白羽の矢を立てたというわけだ。
「未完の大器」獲得のためには、それなりの交換要員が必要
廣岡はこのトレード話が始まった巨人との練習試合でも、ヤクルトの「7番・ショート」で先発出場して巨人・先発のドラフト1位右腕・平内龍太投手から豪快な一発を放った。奈良・智弁学園高校では岡本和真内野手の1年後輩で、パワーヒッターとしての素質、野球センスには高い評価がある。ただそれだけの評価を受けながら、ヤクルトではレギュラーを取れずに伸び悩んでいるのも事実だった。
その未完の大器を獲得するためには、それなりの交換要員を用意しなければならないこともわかっていた。
そこでヤクルトの投手事情を計算した上で、巨人が用意した選手が田口だったという訳である。
普通なら同一リーグのライバルに、先発ローテーションを担える力のある投手を出すことは冒険ではある。
「未知の力というのは僕らにとってはありがたい」
ただ原監督のインタビューの言葉から、田口をヤクルトに出す決断の背景も読み取れる。