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【197試合無失点】世界最強GKノイアーの物語… 5歳時のテディベア、“遠足”みたいな守備範囲とオーラの秘訣
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/02/20 17:01
2010年W杯時のノイアー。あの驚異的な守備範囲と反応、フィード力。彼がGKの概念を変えたと言って過言ではない
バイエルンのハンス・ディーター・フリック監督は、高い守備ラインをしき、前線からどんどんプレスを掛けていくスタイルを見せる。対戦するチームはボールを奪ったら手数をかけずに守備ラインの裏へロングボールを送り、FWを走らせようとするが、ノイアーは飛び出しのタイミングを修正しながら、無駄の少ないコース取りで相手のチャンスになりそうなパスを事前にカットしていく。
正しくポジションをスキャンする能力
また、ノイアーの特長を語るうえで欠かせないのは正しいポジションをスキャンする能力だ。裏のスペースへ放り込まれてくるパスに対して、あるいはクロスボールに対して、裏抜けしてきた相手FWに対して、どこに、どのように、どこまで飛び出すべきか。状況に応じた最適な判断を一瞬のうちに下していく。その精度が恐ろしく高い。
例えば、昨シーズンのCL決勝。ネイマールのシュートを防いで、こぼれ球の折り返しも身体でブロックしたシーンがハイライトとして紹介されることが多いが、マルキーニョスとの1対1を制したシーンも素晴らしかった。
ペナルティーエリア内で1対1の状況になりながら、焦ってボールに向かって飛び出すことなく、その場からスッと数歩前に出て壁を作る。トップレベルでは最後の立ち位置が数十cmずれただけで、失点を防げるかどうかが変わる。
自分がどこに立ち、どんな身体の向きで、どのように対峙すべきかを瞬時に決断する。同時にシュートに対して求められるテクニックを速やかに行えるかどうかに集中。その判断スピードと精度の確かさ、そしてイメージ通りに動ける実践力が、ビッグセーブにつながっている。
欠かせない「アウスシュトラールング」
さらに大事な点として、ドイツにおけるGKへの評価の1つ「アウスシュトラールング」を挙げたい。直訳すると「オーラ」と言えるだろうか。
言い換えれば、GKとしての存在感か。単純に数値化できるものではないが、でも実際にピッチ上で大きな影響を及ぼす項目として捉えられている。
2016年欧州選手権後の国際コーチ会議でのGKに関する講義で、DFBのGKコーチであるトーマス・ロイが次のように説明していた。