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【197試合無失点】世界最強GKノイアーの物語… 5歳時のテディベア、“遠足”みたいな守備範囲とオーラの秘訣
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/02/20 17:01
2010年W杯時のノイアー。あの驚異的な守備範囲と反応、フィード力。彼がGKの概念を変えたと言って過言ではない
2017年のシーズン終盤、左足甲を亀裂骨折してしまう。ボルトを入れることで早期復帰を目指したが、その後のCL準々決勝R・マドリー戦で再び骨折してしまい、長期の離脱を余儀なくされた。
“ノイアー時代は終わった”の声を黙らせて
結局、2017-18シーズンはリーグ戦3試合にしか出場できなかった。18年ロシアW杯には何とか間に合ったものの、不安を抱える状態だったのは否めない。
優勝候補だったドイツ代表は、まさかのグループリーグ敗退……。そしてバルセロナで素晴らしいパフォーマンスを見せていたマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンの存在もあり、「ノイアーの時代は終わった。道を譲るべきだ」という声と戦わなければならない時期が続くことになる。
「GKは最初のオフェンス選手だよ」
しかしノイアーは、昨シーズンから以前のようなパフォーマンスを取り戻し、昨年にはまたも世界最優秀GKに選ばれた。そんな彼が現在も優れている点、そして現在だからこそ優れている点はどこにあるのだろうか?
足下の技術が確かで、試合の流れを読む感覚も優れている。だから、ビルドアップにもどんどん絡んでいく。そのスタイルは健在だ。
「FWは最初のDFとよく言われるでしょ。それでいったら今日ではGKは最初のオフェンス選手だよ」と公式クラブマガジンのインタビューで答えていたノイアーは、実際に攻撃の起点として得点を演出するGKでもある。
ゴールを守る動きはどうだろう。20代の方がキレていたのは間違いない。193cmの体躯ながら常人離れした瞬発力と反射神経で、絶対に止められないと思われたシュートさえも弾き返していた当時のようなプレーはできなくなった。その視点からみたら彼より優れたGKはいるだろう。
それでもノイアーは、積み重ねた数多の経験から試合の流れを的確に読み、チーム戦術を深く理解したうえで最適なプレーを選択する能力を持っている。今も昔も積極的な飛び出しで味方を鼓舞している。