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ポゼッションサッカーの「神髄」とは? ビエルサが演出した熱狂のリバプール戦で起きていたこと
posted2020/09/24 11:00
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph by
Getty Images
後編「ビエルサは『失敗のスペシャリスト』と言うが…アルゼンチン、日韓W杯早期敗退と濃い“裏話”」https://number.bunshun.jp/articles/-/845147 もご覧ください。
9月11日、リーズ・ユナイテッドはマルセロ・ビエルサ監督と1年契約延長の締結を発表した。
プレミアリーグの開幕は9月12日。1日前というギリギリまで、ビエルサは続投にオッケーと言わなかったことになる。
日本人で唯一のビエルサ門下生であるサッカー指導者・荒川友康はこう語る。
「マルセロは代理人を立てずに契約も全て1人でやっています。基本的には単年契約しか結ばない。拘りが強い人ですから、自らが考えるベストの環境でなければ、リーズ続投にも同意するつもりはなかったのだと思います。
ベストの環境とは選手補強だけではなく、クラブハウスやトレーニング施設の細部に至るまでマルセロはリーズ側に細かい条件を出していたはずです。マルセロはチームを強化するということだけではなく、よりクラブが発展していく環境を作ることを望むのです。
続投が発表されたということは、それらの条件に対して一定の目途がついたということでしょう」
「契約解約条項」が付記されているという噂も
ビエルサは契約に対しては厳しい態度で臨むことで知られている。選手補強の約束が履行されなかったと、ラツィオとの契約を2日で破棄したのは有名なエピソードだ。マルセイユやリールでもフロントと対立して途中辞任をしている。
リーズではクラブハウスに宿泊施設を設けたり、ランニングコースを新しく整備するなどの施策がビエルサの要求によって導入された。
ビエルサの契約には必ず自ら契約を解消することが出来る「契約解約条項」が付記されているという噂もあるほどだ。
欧州のクラブ監督という高給が約束された職をいとも簡単に投げ出す様は、メディアからは異様に映るのだろう。“エル・ロコ(スペイン語の奇人)”という仇名を、“サッカー狂”ではなく“マッドマン(精神的におかしい人)”と捉える記者も数多くいた。
イギリス紙『The Sun』の報道によればビエルサの昨季の年俸は600万ポンド(約7億8000万円)だったという。チャンピオンシップの監督としては異例の高給だった。新契約では800万ポンド(約10億円)を手に入れることになるという。