欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ポゼッションサッカーの「神髄」とは? ビエルサが演出した熱狂のリバプール戦で起きていたこと
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph byGetty Images
posted2020/09/24 11:00
リバプール戦でテクニカルエリアからチームに指示を叫ぶビエルサ
10億円の高給よりも自らの哲学を優先
ちなみにビエルサの新年俸は、ペップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)が年俸2000万ポンド、ユルゲン・クロップ(リバプール)1500万ポンド、ジョゼ・モウリーニョ(トッテナム)1500万ポンド、カルロ・アンチェロッティ(エバートン)1150万ポンド、ブレンダン・ロジャース(レスター)1000万ポンド)の契約に次ぐ、プレミアリーグではNO.6の高給となる。
メガクラブを率いているチェルシーのフランク・ランパード(チェルシー)の550万ポンド、ミケル・アルテタ(アーセナル)の500万ポンドを大きく上回るリッチな監督となっている。
だが、7~10億円の高給であろうとも、自らの哲学に反することが起きれば契約を破棄することは厭わない。それがビエルサという人物なのだ。
「“おばあちゃんの家”と呼ばれるヨークシャーの古い質素な一軒家に住み、毎日、40~50分かかる距離を徒歩通勤する。年中、ジャージ姿であることからもわかるように、マルセロにとって大事なものはお金ではない。サッカーなのです。
高給で良い暮らしをすることには興味がなく、お金の使い方も独特です。マルセロが古巣ニューウェルス・オールドボーイズの若手選手の為に、ポケットマネーで250万ドルを寄付して寮を建設したという逸話は有名です」(荒川)
歴代プレミアリーグ開幕戦のベストゲーム
9月12日のプレミアリーグ開幕戦はディフェンディングチャンピオンのリバプール対チャンピオンシップ(2部相当)王者リーズの対戦となった。
一足早くアンフィールドのグラウンドに入ったクロップはピッチサイドに立ちリーズの入場を待った。ビエルサがのっそりと姿を表すと、歩み寄り握手を求めた。チャンピオンチーム監督はエル・ロコに最大限の敬意を示したのだ。
この一戦は無観客試合とは思えないほどのエモーショナルなものとなった。歴代プレミアリーグ開幕戦のベストゲームとも評判になった一戦について、荒川の解説を交えながら掘り下げていきたい。
なぜリーズは善戦できたのか、リーズの攻撃にはどのような意図があったのかを検証していく。