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ビエルサは「失敗のスペシャリスト」と言うが…アルゼンチン、日韓W杯早期敗退と濃い“裏話”
posted2020/09/24 11:01
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph by
JMPA
「3ゴールを奪えたのはいいことだ。効率的? もっと危険な場面を作るべきだったし、チャンスの数は足りなかった」
会見で記者の質問に答えたとき、ビエルサは少し不快な表情をしていた。記者が少ないシュート数で3点取ったリーズを「効率的」と評したからだ。
「マルセロが試合を分析するときに、重要視する項目の1つが決定機の数です。ポゼッションをして決定機を作るというプロセスを経て得点は生まれる。だから効率的であるとか決定力が高いということは、必ずしも重要ではないのです。だから、記者が『効率的だった』と質問をしたことに不快感を示したのだと思います」(荒川)
ビエルサのサッカーが攻撃的であると評されるのは、全てのプレーが決定機を作るために設計されているからだ。リバプールの4点は全てセットプレー絡み。サラーは個の力を見せつけたが、アーティステックなプレーを見せることは出来なかった。
一方でリーズは流れのなかから3点を取った。機能美溢れるプレーの数々はファンを熱狂させた。
「醜く勝つより、美しく負けろ」
伝説のヨハン・クライフは「醜く勝つより、美しく負けろ」と言った。リーズはサッカーの美しさで王者リバプールを上回ったといえるだろう。
この日の試合を見てイングランド中のサッカーファンがリーズの虜になったと言われている。サッカー討論番組では、ビエルサのサッカーが“ホットイシュー”となった。しかし、ただ1人、不満を示した男がいた。エル・ロコ、本人である。
「敗北は避けられたはずだ。サッカーは予測不可能だが、起こるとわかっている状況はある。それが起こると知っているから確実に止められるとは言えないが、避けられたと感じるゴールを決められた時、失望はより大きくなるものだ。私が敗北で幸せを感じることは決してない」
ビエルサは記者会見でこう語ると表情を曇らせた──。