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井手智がドイツ移籍に求めるもの。
リベロはレシーブだけじゃない。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAFLO
posted2020/08/31 11:30
6年間過ごした東レを離れ、ドイツリーグのユナイテッド・バレーズ・フランクフルトでプレーすることを決断した井手智。
「日本人は守備力が高い」
リベロとは何をする人か。
その役割を多くの人が「レシーブの中心」とか「守護神」と答えるように、ディフェンスで軸になるポジションのため、レシーブの技術は必須。特に育成年代である中高生の頃は、レシーブ練習に重きを置く指導者も少なくない。
古賀だけでなく、井手も「死ぬほどレシーブ練習をしたので、技術は身体に染み着いた」と言うように、台上から放たれる強打を拾い、なおかつ正確に返す。多くの海外指導者からも「日本人は守備力が高い」と言われる背景に、積み重ねた練習の成果があるのは間違いない。
だが、いくらレシーブがいいからと言って、試合になればさまざまなシチュエーションが生じる。バレーボールはアタッカーとレシーバーが1対1で対峙し、単にボールを拾い続けていれば試合に勝てるという競技ではない。
古賀「スキルだけだと行き詰まる」
ならば、リベロに求められるものは何か。
1人1人のプロ意識が高い海外リーグでリベロに問われるのが、「適応能力」と「コミュニケーション力」だ。自ら海外でキャリアアップを遂げた古賀はそう言う。
「スキルだけだと行き詰まるんです。たとえば練習の中で疑問があれば選手はその都度聞くし、指導者にはその答えがある。日本では指導者が圧倒的上位に立つ関係性なので、以前は聞くこと自体疎まれるような環境もあったと思いますが、海外でそれはない。聞かれたことに対してわからなければ、『わからない』とハッキリ言いますし、もちろんそのまま終わらせるのではなく『明日まで待ってくれ』と言われ、翌日にはちゃんと答えを示してくれる。
そういうやり取りの中で自分は何ぞや、というのを選手は示さないといけないわけだから、いくらレシーブ技術があってもコミュニケーションが取れない、指導者のやりたいことを理解してフィットできないなら、評価はされません」
さらなるレベルアップへつなげるための変化。井手が求めたのも、まさにそこだった。