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“頼れる兄貴”に成長中。石川祐希が新天地で目指すもの。
posted2020/09/07 17:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
バレーボール男子日本代表のエース、石川祐希のイタリアでの6シーズン目がいよいよ始まる。今年6月、中堅チームのパドバから昨季リーグ5位のミラノに移籍した24歳にとって、今季は「僕がトップに上り詰めるための1年」という位置づけ。「ここで結果を出して、いずれ上位4チーム(モデナ、チビタノーバ、ペルージャ、トレント)でプレーしたい。今季次第で選手としてのキャリアが大きく変わる」と、並々ならぬ決意を語っている。
目標実現のためのキーワードは「リーダーシップ」だ。理想とする選手がいる。'14-'15年にモデナでともにプレーしたセッターのブルーノ・レゼンデだ。ブラジル代表として'08年北京五輪、'12年ロンドン五輪の銀メダルを持ち、後に母国開催の'16年リオデジャネイロ五輪で悲願の金メダルを獲得した名選手。当時19歳だった石川は、アタッカーの要望に合わせたトスを上げようとすることの多い日本のセッターと異なり、「俺に合わせろ」と求めるブルーノから多くのことを学んだ。特に印象に残っているのは、レシーブが乱れたときの指示。「俺はここまでしか行けないから、もっと中から入って打ってくれと言われるなど、要求が細かかった。トスが悪くなった時の対処の指示は具体的だった」という。
「頼られる選手になりたい」
新天地のミラノでは、22歳のイタリア代表セッター、リッカルド・スベルトーリのトスを受けると予想される。「ミラノはチーム全体が昨季以上に若くなっているので、困ったときに頼られるような選手になりたい。若い選手が爆発するきっかけになれるようにしたい」。堂々と語る様子はもはや頼れる兄貴。かつてブルーノが自身を高みへと誘ってくれたことを重ねているようだ。
日本に帰国中は、バレーに取り組む人たちに向けた新型コロナウイルス感染予防ガイドブックを作成。8月上旬のプロジェクト発表から1週間で啓発ポスタープレゼントへの応募が100件以上来るなど大反響で、コート外では既にリーダーシップを発揮している。石川は「特に子どもたちに見てもらいたい」と期待する。
イタリアでは9月13日にカップ戦が始まり、リーグ戦は同27日に開幕する。「覚悟を持って臨みたいシーズンです」と語る石川の歩みを楽しみにしながら見つめたい。