野ボール横丁BACK NUMBER
スポーツの使う言葉、使わない言葉。
毎日新聞校閲センターはこう考える。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTomosuke Imai
posted2020/04/10 15:05
「かっこよく言えば知の番人」と笑って話してくれた毎日新聞校閲センターの3人。右から川合寛さん、林弦さん、宮城理志さん。
ハーフは使用例あり、野性的は○。
――近年、日本のスポーツシーンでも、ハーフの選手が増えてきました。新聞ではやはり「ハーフ」は使えないのでしょうか。
B)例外はありました。安易に使うと差別的なニュアンスがあることを踏まえたうえで、ルーツへの偏見と向き合う人を扱う記事であえて使った例があります。
――雑誌などの場合は「ハーフ」は許されているのですが、「ハーフでない人」を表現するときに苦労します。「混血」が使えないのと同じ意味で、「純血」とは使えませんし。結局、「両親ともに日本人の……」というような書き方をするしかない。
差別的な表現という意味では、近年では「野獣のような」とか「野性的な」という形容も問題になりがちです。
A)「野獣」は微妙ですね。場合によってはアウトでしょう。「野性的」なら、よほど強く人種を意識させるものでなければ許容される範囲かなと思います。
「ら抜きは、許容しません」
――書く方の立場からすると、会話も、なるべく忠実に再現したい。なので「していました」ではなく「してました」と書きたいし、「そうなのですか」ではなく「そうなんですか」と書きたい。でも校閲としては、ここまではいいけど、ここは認められないというラインがあるのでしょうね。
B)記事の性質にもよりますね。会話の生々しさとか、言葉のリズムを大事にしたいのだなとわかる場合は多少、砕けた言葉でもそのまま載せます。
――ら抜き言葉は?
A)ら抜きは、許容しません。文法違反であるという認識を多くの読者が持っているので、規範的な文章を載せる新聞としては今のところ避けた方がよいと考えています。
――「止むを得ない」も、日常言葉では「やむえない」と言ってしまいますが。
B)そこも放ってはおけないですね。「を」が抜けてしまっている感じがするので。読者にミスだなと読まれてしまう可能性が高い。