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スポーツの使う言葉、使わない言葉。
毎日新聞校閲センターはこう考える。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byTomosuke Imai

posted2020/04/10 15:05

スポーツの使う言葉、使わない言葉。毎日新聞校閲センターはこう考える。<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

「かっこよく言えば知の番人」と笑って話してくれた毎日新聞校閲センターの3人。右から川合寛さん、林弦さん、宮城理志さん。

アメフットが変わるきっかけはあの事件。

――どういうとき、どういうタイミングで基準が変わるのですか。

A)校閲サイドから言うことはありません。だいたい記者の方から、こうした方がいいんじゃないですかという提案があります。たとえば、一昨年、日大のアメリカンフットボール部の悪質なタックルが物議を醸し、毎日のようにその話題が紙面を賑わしました。

 毎日新聞は当時、アメリカンフットボールのことを「アメフット」と略していたのですが、その言い方も普段、聞かないですよね。なので運動部の方から「アメフト」でいいのではないかと提案があって、こちらもそれに応じました。これまで一般紙でアメフトが記事になることはほとんどなかったのですが、それがたまたま一昨年、ああいう形で注目を集め、用語変更につながりました。もしあの事件がなかったら、今も「アメフット」のままだったかもしれません。

エムバペかムバッペか。

C)外来語の表記は各社とも最終的に共同通信に合わせていく傾向があります。弊社でもスポーツ選手の名前などで食い違いが生じたら、共同にならうことがよくあります。

――サッカーフランス代表のストライカーで、各媒体で表記が分かれた「ムバッペ」は?

A)「エムバペ」ですね。そこは2018年のロシア・ワールドカップのときのままです。共同通信と同じです。サッカー選手の名前は媒体ごとに意見が割れるケースが目立ちますよね。

 ポルトガル代表のクリスティアノ・ロナルドも、共同に準じて、うちは「ロナルド」です。「ロナウド」と呼んでいる媒体も多いですよね。ブラジル代表の場合は「ロナウド」と表記しているので、想像ですが、ヨーロッパ系ポルトガル語とブラジル系ポルトガル語の発音の違いを「ル」と「ウ」で表現しているのではないかと思います。

【次ページ】 ハーフは使用例あり、野性的は○。

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