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2019年ルヴァン決勝、川崎を救った
中村憲剛と小林悠、家長昭博の真髄。
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いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/04/07 11:30
![2019年ルヴァン決勝、川崎を救った中村憲剛と小林悠、家長昭博の真髄。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/4/2/700/img_42481e1911656d9e4e60fbb2e6c0077c177741.jpg)
PK戦を制した後の川崎イレブン。歓喜の小林悠に笑みを浮かべる中村憲剛、背中で語る家長昭博。それぞれの“らしい”姿だった。
PK戦、家長はいつもの家長だった。
120分でも決着がつかず、勝負はPK戦に委ねられた。
コイントスで先行を取った川崎は、小林、山村、中村が成功するも、4人目の車屋紳太郎が痛恨の失敗。札幌は4人全員が決めていたため、5人目のキッカーが外すと、その時点で勝者と敗者が決まることとなる。
登場したのは家長昭博だった。
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120分走り抜き、疲労もピークに達していたはずである。ましてや、大観衆が固唾を飲んで見守るこのシチュエーションだ。常人には想像できない重圧もあったに違いないが、まるで何事もなかったように冷静にゴールネットを揺らしている。
思わず試合後のミックスゾーンで「PKの時、緊張はなかったんですか」と尋ねてしまったのだが、子供じみたこちらの問いかけにも「ないです。PKを蹴る時は、外しても良い覚悟をいつも持っているので、緊張はないですね」と、いつも通りの家長節だった。
6人目の長谷川が持っていた確信。
札幌5人目となる石川直樹のキックを新井章太が見事に阻止し、サドンデスにもつれ込むと、川崎は6人目の長谷川が成功。“自分が信じた方向に蹴ろう”と決めていたという長谷川はガッツポーズを決めた後、仁王立ちのまま両こぶしに力を込めて、全身で喜びを表現している。そして次で決着がつくという予感があったという。
「(新井章太が)止めるだろうな、と思いました。というのも、自分が一番決めるのが怪しかったので(笑)。自分が決めた後に進藤(亮佑)選手の雰囲気を見て、きっと蹴りにくいだろうと思ったし、ショウタくんが止めるだろうと思ってました」
その予感は当たり、札幌の6人目のキックを新井がキャッチ。劇的な幕切れで、川崎が初制覇を飾った。