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2019年ルヴァン決勝、川崎を救った
中村憲剛と小林悠、家長昭博の真髄。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/04/07 11:30
PK戦を制した後の川崎イレブン。歓喜の小林悠に笑みを浮かべる中村憲剛、背中で語る家長昭博。それぞれの“らしい”姿だった。
阿部「こんな試合、もうないでしょ」
試合後、阿部浩之は「こんな試合、もうないでしょ。何回負けたかと思ったか」とおどけていたが、全くもって同感である。タイトル戦で毎回こんな劇的な試合をされたら、観ている側の心臓に悪いので勘弁してくれと思う。
一方で中村は「いろんなことが起こりすぎて、わけがわからないです」と笑っていた。初めての決勝に挑んだ2007年から12年目でようやく掲げることができた聖杯。その勝因として彼が胸を張ったのは、王者としての経験値だった。
「結果論ですけど、リーグを獲ってチャンピオンになった経験というのは、最後の最後まで折れずにやりきったという意味で生きたと思う。カップ戦も、これだけ最後まで紆余曲折があった中で、最後にもぎ取った。それはクラブに間違いなく受け継がれていくと思う。若い選手も出ていたし、彼らにとっても大きかった。最高の気分です」
こうして令和最初のタイトルマッチは幕を閉じた。
心の中に熱が残るようなお祭りを。
そして、あらためて思う。
カップ戦の決勝とは、やはりひとつのお祭りだ。
両チームの選手からすればタイトルをかけた大勝負だが、観る者にとっては、リーグ優勝が決まる試合とも違う雰囲気を楽しむ舞台でもある。勝者と敗者に色分けされるのは残酷だが、激闘であればあるほど記憶には刻まれ、祭り後の熱もどこか心には残っているものだ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、Jリーグという日常が失われた日々は、まだ少し続きそうである。こんな心の中に熱が残るようなタイトルマッチを、スタジアムで見られる日がまた来ることを願っている。