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福岡堅樹が選んだ15人制との別れ。
「残された時間」を五輪のために。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2020/01/20 18:00

福岡堅樹が選んだ15人制との別れ。「残された時間」を五輪のために。<Number Web> photograph by AFLO

福岡堅樹は15人制ラグビーで約束されたスーパースターの地位を手放し、五輪へ挑む。その潔さはどこからくるのだろうか。

TL史上最多の観客の前で。

 パナソニックのスケジュールを見れば、1月18日の第2節は序盤戦の大一番だ。昨シーズン4位のトヨタ自動車ヴェルブリッツと激突するこの試合までプレーし、そこからセブンズの日本代表候補に合流するのは、様々な意味で折り合いのつくタイミングだったのではないだろうか。

 W杯のサモア戦が開催された豊田スタジアムでのトヨタ戦には、TL史上最多の3万7000人を超える観衆が詰めかけた。それまでの記録を6000人近く上回った。福岡は後半終了間際にトライをあげ、パナソニックは40-20で勝利した。

 試合後に記者会見に臨んだ福岡は、すっきりとした表情を浮かべていた。いつもどおりに快活な口ぶりだ。

「開幕戦からたくさんの人がスタジアムに来てくれて、いま日本のラグビーに勢いが来ていると感じています。だからこそ、自分を少しでもTLで見てもらえるようにして、ラグビー人気を冷めさせないために、自分にできることをやろうと思って、TLに少しだけでも挑戦させてもらいました」

W杯でなしとげたことへの自負。

 セブンズへ話題が及ぶと、少しずつ表情が引き締まっていく。言葉に決意が込められていった。

「いまラグビーが注目してもらっているのは、15人制の日本代表があったから。7人制は目にしてもらう機会が少ないので、知名度はまだまだだと思います。ここで五輪競技として7人制がスポットを浴びて、7人制は7人制として注目されるために、今回の自分の挑戦で少しでも広まってくれれば」

 決意のそばには危機感がある。セブンズの日本代表候補は「年間200日の活動」(本城和彦強化委員長)を積み重ねてきた。福岡のようにこれから転身する選手には、「すでに20人ぐらいがずっと7人制をやっている。(あとから合流する選手は)そのチームに入ってこられるのか。競技としての特性が出始めているので、体力的にもフィットできるか」(岩渕HC)といった課題も横たわる。

【次ページ】 五輪における4位とメダルの差。

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