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福岡堅樹が選んだ15人制との別れ。
「残された時間」を五輪のために。
posted2020/01/20 18:00
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
AFLO
もうひとつのエンジンを起動させるために、日本屈指のスピードスターがキャリアを転換させた。昨秋のラグビーW杯でトライゲッターとして名を馳せた福岡堅樹が、東京五輪の7人制日本代表を目ざすことを表明したのである。
現在27歳の彼にとっては、あらかじめ考えていた人生のルートだ。'19年に15人制の日本代表としてラグビーW杯でプレーし、'20年は通称セブンズの7人制で五輪に出場する。'16年のリオ五輪に続いて、セブンズで世界の舞台に立つ。
その後は医師へ転身するというのが、かねてから公言してきた彼のライフプランである。
福岡を悩ませたのは、今シーズンのトップリーグ(以下TL)にどこまで参加するのかだった。
7人制の岩渕健輔ヘッドコーチ(HC)は、TL開幕前の昨年12月の段階で「W杯に出場した何人かの選手と、(セブンズ出場について)協議をしています」と明かしている。そのうえで、選考の重要な要件として「タイミング」をあげていた。
「(現時点で決まっている活動で)最後の大会は'20年の4月。1試合も国際大会に出ないで、五輪に出るのは難しい。そのあたりを考えての選考になります。15人制の日本代表ということは関係なしに、セブンズへの適応、過去の出場歴などを踏まえる。
セブンズの適応には、けっこうな時間がかかります。パッと試合に出られるかというと、そうでもありません。出場するには相当な期間が必要なのははっきりしています。そういう意味で、選手には決断をしてほしい。来たい人にはぜひ早く来てほしい」
福岡が決断したこのタイミング。
他でもない福岡自身にとっても、タイミングの見極めは難しかったはずだ。所属するパナソニックワイルドナイツは、'15-'16シーズン以来のリーグ制覇へ向けて戦力を大幅にアップした。タイトル奪還の力になりたい、との思いは強かっただろう。
さらに言えば、W杯で発火した盛り上がりもある。日本代表のベスト8進出でラグビーに目覚めたファンは、当然のことながら代表選手のプレーを見るためにスタジアムへ足を運ぶ。
そのなかには、松島幸太朗とともに“日本のフェラーリ”と呼ばれたパナソニックの快速ウイングも含まれている。