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福岡堅樹が選んだ15人制との別れ。
「残された時間」を五輪のために。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/01/20 18:00
福岡堅樹は15人制ラグビーで約束されたスーパースターの地位を手放し、五輪へ挑む。その潔さはどこからくるのだろうか。
五輪における4位とメダルの差。
セブンズ日本代表がリオ五輪でアップセットを演じた大国ニュージーランドには、'11年と'15年のW杯優勝メンバーのサニー・ビル・ウィリアムズがいた。15人制の実績をそのまますぐに持ち込むのが難しいのは、リオ五輪を知る福岡自身も認識しているはずである。
それだけに、「前提としてメンバーに入るのが大変なので、大それたことは言えません」と話す。そのうえで、胸に使命感を宿すのだ。
「リオ五輪を経験しましたが、メダルを取るか取らないかで扱いの差というものを感じました。4位でも自分たちとしては快挙だったけれど、周りの活躍に埋もれてしまって悔しい思いをしました。やるからにはメダルを目指したい。そのための努力をしたい」
岩渕監督率いるセブンズ日本代表は、昨年12月にワールドラグビーセブンズシリーズに出場した。世界のトップ15カ国の戦いに2大会連続で招待出場したのだが、最下位の15位に終わっている。
福岡が広げるチームの可能性。
岩渕HCは昨年の段階で、厳しい現状認識を示していた。
「五輪ではリオに続いて東京が2回目ということで、各国の強化が専門的に進んでいる。メダルを獲るのは簡単でなく、単純な比較はできませんがW杯のベスト8入りよりも難しい。最後に何回勝たなければいけないかを考えると、ベスト8から2回勝たなければメダルに届かない。これは本当に大変です」
福岡がメンバーに加わったとしても、世界のトップオブトップとの差が一気に縮まると考えるのは楽観的過ぎる。それでも、チームの可能性を広げる存在に成り得るのは間違いない。
15人制と同じサイズのピッチを7人でカバーするセブンズは、ひとりひとりの選手が広いスペースを持つことができる。爆発的なスピードを持つ福岡には、得点源としての期待が寄せられる。同時に、1本のタックルで相手を仕留めることも必要となるだけに、ディフェンス力の高さもチームの武器になっていくはずだ。