Jをめぐる冒険BACK NUMBER
東京五輪世代の問題点を整理する。
出ない声、固まらぬ編成、濃い疲労。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKyodo News
posted2020/01/13 20:00
先制を許し、追いつきながらも攻撃が停滞し、試合終盤に決勝点を被弾。サウジアラビア戦と同パターンで負けているようでは……。
欧州組が急増し、招集に困難が。
「負けてしまって今、感じるのは、そこ(東京五輪の出場権獲得)への想いに対する相手との違いが大きかったかなと。やっぱりどこかに気持ちの差が生まれていたのかなと。同じ気持ちで戦おうと思って試合に入ったけど、結果として負けているので……」
そう悔やんだのは3バックの一角を務めた渡辺剛だ。2試合ともキャプテンマークを巻いただけに「反省している」「悔しい」と神妙な面持ちで語った。
一方、ボランチに入った齊藤未月は「このチームはコミュニケーションが少ないと思う。ゲームにならないとスイッチが入らないタイプの選手が多い」と指摘した。
その理由のひとつが、メンバー編成にある。東京五輪への出場はすでに決まっているため、森保監督は2017年12月のチーム立ち上げ以来、74人もの選手を招集し、成長するチャンスを与えてきた。
一方で、この2年間で欧州組が急増し、呼びたい選手を呼べないという実情もある。
今大会に招集した欧州組は食野亮太郎(ハーツ)だけ。12月28日のジャマイカ戦でも、中山雄太(ズウォレ)、前田大然(マリティモ)、安部裕葵(バルセロナB)、山口瑠伊(エストレマドゥーラ)、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)の5人だった。
堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)、冨安健洋(ボローニャ)、三好康児(アントワープ)、板倉滉(フローニンゲン)、伊藤達哉(シント=トロイデン)、菅原由勢(AZ)らは招集することができなかった、あるいは、本番のためにあえて無理に呼ばなかった。
代表活動のたびに「初めまして」。
「代表の活動のたびに『初めまして』の状況なので、土台がなくなってスタートしている感があるというか」
3バックを束ねる岡崎慎は、悩ましげに語った。
東京五輪代表チームはシリア戦までに39試合を戦ってきた。
そのなかでシリア戦スタメンのこれまでの出場試合数を見てみると、上田綺世は26試合目、松本泰志は25試合目の出場だったが、以下の選手たちは10試合以下しか出場していないのだ。
大迫敬介:6試合目
岡崎慎:10試合目
渡辺剛:3試合目
町田浩樹:5試合目
齊藤未月:4試合目
食野亮太郎:4試合目
森島司:9試合目
相馬勇紀:5試合目
橋岡大樹:10試合目
つまり、ほとんど一緒にプレーしたことのないメンバー。だからこそ、選手間の密なるコミュニケーションや深い相互理解が重要になるのだが、そこに問題があった。