Jをめぐる冒険BACK NUMBER
東京五輪世代の問題点を整理する。
出ない声、固まらぬ編成、濃い疲労。
posted2020/01/13 20:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kyodo News
まるで伝わって来なかった。黒星スタートになったことへの危機感も、だからこそ2戦目は必勝を期すという気迫も、東京五輪のメンバーに生き残るという強い覚悟も……。
タイで行なわれているU-23アジア選手権に参戦中の若き日本代表は、サウジアラビア戦に続いてシリア戦でも1-2と敗れ、カタールとの最終戦を残し、まさかのグループステージ敗退に追い込まれた。
しかも、軽率なミスからPKを与え、ゲーム終盤に逆転を狙って攻勢に出たところでカウンターを食らうパターンは初戦と同じ。サウジアラビア戦の教訓を本当にチーム全体で共有できていたのか。
U-23アジア選手権は2014年から2年に一度開催されてきたが、日本がグループステージで姿を消すのは、これが初めて。A代表のアジアカップ、五輪代表のアジア大会、U-19アジア選手権、U-16アジア選手権と、各年代のアジアのコンペティションに広げてみても、グループステージ敗退は2006年、反町ジャパンが参戦したドーハでのアジア大会まで遡らなければならない(このときだって2勝していた)。
コーチの声しか聞こえないアップ。
今大会は東京五輪アジア最終予選を兼ねている。各国は出場権獲得を狙って死にもの狂いで戦っている。一方、日本は地元開催のため、オリンピックの出場権はすでに手中に収めている。
何かを懸けて戦っているチームと、負けても失うもののないチーム。この戦いは簡単ではないが、その差を埋めるために、どう働きかけていくのか――。
大会が始まる直前、森保一監督にそう訊ねると、指揮官はきっぱりと言った。
「生き残りが懸かっている。選手たちのモチベーションが低いとか、ないとかはあり得ないと思います。相手がどうこうではなく、東京五輪に向けて、その先に向けて思いを持って、志を持って、戦ってくれると思っている」
ところが、どうだろう。
見られた限りの練習の雰囲気は物静かで、野心に、闘志に溢れているようには感じなかった。試合前のアップは特に顕著で、ピッチサイドで撮影していたカメラマンは「コーチの声しか聞こえない。こんなに声が出てないことも珍しい」と嘆いていた。